家族

十七、八の頃…荒れに荒れて
毎日ケンカに明け暮れた
女手一つで育ててくれた母親に心配ばかりかけていた
そんな自分を見られるのが恥ずかしくて
大好きだった劇団にも顔を出さなくなっていった…

「ろくでもない知り合いのツテで、ヤクザの下っ端みたいな仕事を
始めた俺は、仕事を見つけたと母親にウソをついた。せめてもの親孝行の
つもりで毎月家に金を入れたが、汚い仕事をしてる後ろめたさも、
ずっと感じてたままだった。
銀泉会の会長に会ったのは、そんな時だ…」

「…しつけえんだよ!」
「金返せコラ!」
「おい」

「おい、わけえの…おめえさん、どうしてそんなに金がいるんだい」

「ズブ濡れで体中痛くて頭も回ってなかった。朦朧とする意識の中で、
俺は自分の身の上を話した。母親に心配ばかりかけて生きてきたこと…
親孝行のために汚い仕事をしていること…そんな自分が後ろめたいこと…
洗いざらい全部な」

「…気に入った。拾ってやるからうちに来い。
うちは義理人情を重んじる古い組だ。まっとうなヤクザの稼ぎ方、
てめえに教えてやる。…今日からおめえは、俺達の家族だ」

家族に背を向けて
生きてきた俺には
その言葉がやけに懐かしく思えた
あの通り雨が
引き合わせてくれた
「家族」と呼べる存在が増えた夜
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