巣立ちの舞

舞をひとさし
巣立ちの舞
舞をひとさし
別れの舞

鳴き方も
飛び方も
生きる術も知らなかった
そんな雁の子を
慈しみ 育ててくれた

あなたが
このくちばしに
いのちと愛をくれました
この翼は
飛び立つ時を待つばかり


唄をひとふし
巣立ちの唄
唄をひとふし
鳴謝の唄

鳴く声も
飛ぶ姿も
こんなに立派になりました
そんな雁の子は
飛び立つ時を待つばかり

どうか どうか どうか どうか
お許しください どうか
どうか どうか どうか
もう決めたことなのです

「……嗚呼、あの人の面影を、そなた達に見る日が来ようとは」

果たすべき悲願
たとえ 焼かれに行くと
わかっていても
これが最後です
飛び立つ我らを
この門出を
どうか…
どうか…

舞をひとさし/嗚呼…
唄をひとふし/嗚呼…

あの日見た
雁の家族
あの雁の子らが今…
いざ
嗚呼…
参らん
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