柳川旅情

しだれ柳の 水面(みずも)を分けて
どんこ船ひとつ 川を下ります
あなたと遊んだ 柳川に
わたしの夢は もうないですか
まるで哀しい 詩人のように
思い出そっと 訪ねに来たのです

白と黒との なまこの壁に
愛の染みひとつ 今はさがせない
片手に開いた 白秋(はくしゅう)の
一行読んで ただ泣けました
あなた恋しい 女はどこで
心の宿を さがせばいいのでしょう

橋の上から 転げて落ちた
柳川毬(やながわまり)は どこへ着くのでしょう
昨日が揺れてる 城下町
未練は水に 流せるでしょうか
揃い浴衣で 歩いた道の
小石を蹴って 涙をふきました
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