櫻の園

木漏れてプールめいた歩道に降る花の影にも似て、
希望は諦めを含むと知る君とのマーチ、静かに。

傾斜の先で見下ろしたひらひらは、
海底都市に漂うマリン・スノーのよう。

黙れば儚く見えそうな人ほどいたずらに笑うから、
離れた寂寥と不在の波が愛着をつのらせる。

透き通ってゆく声に縁取られて、
春の暮らしが青白く染まったら……?

重なりあって、
生まれ変わって、
無垢なままで愛しあって生きてゆける魔法なんてなくて、
それでも愛を、
暮らしの哀を、
港の藍を、
知らないそぶりなどできない。

傾斜を降りて見上げたひらひらは、
恋人たちに降りそそぐ記憶のよう。
今日という日の言葉や仕草だって、
過ぎ去りし日の誰かの繰り返しだ。

そんな僕もいつか、
そんな君もいつか、
失うだけ?
×