北のさすらい

風にちぎれた 噂をたどり
小樽色内(いろない) 運河のほとり
泣きごと言わない 女(ひと)だった
わがまま言わない 女(ひと)だった
誰を気遣い 身を引いた
北のさすらい 俺を泣かすのか

降って止まない 留萌(るもい)の雪は
しのび泣きする 涙の粒か
笑顔が可愛い 女だった
涙を見せない 女だった
守り切れずに 傷つけた
北のさすらい 俺を濡らすのか

窓でうつむく 待雪草(まつゆきそう)に
揺れて重なる 横顔ひとつ
陽だまりみたいな 女だった
俺には優しい 女だった
ここは最果て 稚内
北のさすらい 俺を責めるのか
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