なみだの峠

何を好んで 手離す母が
どこにおりましょう 乳飲(ちの)み子を
雨降れば 雨に泣き
風吹けば 風に泣き
あゝ、あゝ会いたくて
一夜一夜(いちやいちや)が なみだの峠

何度死のうと思ったことか
でもひと目 ひと目おまえに会うまでは
そしてひとこと詫びたくて
そんな想いで 母は今日も生きているのです

針でこの身を 突き刺すよりも
会えぬ辛さは なお痛い
この春で もう七歳(ななつ)
母知らぬ 不憫(ふびん)さを
あゝ、あゝ遠い町
いかにおまえは 凌(しの)いでいてか

神さま仏さま こんな母でも
夢見ることが許されるなら
どうか、あの娘(こ)を守ってやっては
もらえないでしょうか

何もいらない 暮らせるならば
ひとつおまえと 屋根の下
花咲けば 花に泣き
星見れば 星に泣き
あゝ、あゝ会いたくて
一夜一夜(いちやいちや)が なみだの峠
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