~浪花侠客伝~木津の勘助

晦日(みそか)に茶ガユの ひと掬い
せめて年寄り 子供にすゝらせて
迎えさせたい 来る年を
こんな願いが きけぬとあらば
馬鹿を承知の ひと暴れ
命捨てなきゃ 納まらぬ
勘助 出番の 蔵破り

この飢饉に公儀(おかみ)のお救米(たすけまい)、
どれほど当てにしたことか。何日待ったことか。
お蔵破りは磔、獄門に決まってる。
けど黙って見過(みすご)すわけには行かんがな。
なァお里。行かしてんか…。

生まれは相模の 在ながら
水が合(お)うたか 馴染んだ木津の浜
この地浪花に 借りがある
女房お里よ 水盃を
首を振らずに 受けとくれ
二世もお前と 暮らすから
勘助 急げと 風が立つ

法被(はっぴ)に重ねた 浴衣には
肩に梅鉢 裾には金太郎
これがお供だ うれしいね
心知ってか 見上げる空に
曇り翳(かげ)りの ない月が
名残惜しやと 顔を出す
勘助 誉(ほま)れだ 鑑(かがみ)だよ
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