お富と与三

「いやさこれお富 久しぶりだなぁ」

しがねえ恋の 情けが仇で
死んだつもりが 拾った命
いやさお富よ 生きてたなんて
お釈迦様でも 気がつくめぇ
ここで逢ったが 三年目
さてさて…… どう済ます

三十四ヶ所(さんじゅうしかしょ)の 刀の傷で
誰が呼んだか 切られの与三(よさ)と
そうさお富よ 小粋に暮らし
おめえばかりが 源氏店(げんやだな)
これで一分(いちぶ)じゃ
帰れめぇ
さてさて…… どう済ます

一度は惚れた おんなとみれば
他人行儀な この差し向かい
いやさお富よ やけぼっくいか
仇な色気に 血が騒ぐ
夜が更ければ 松の月
さてさて…… どう済ます
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