与謝野晶子

わが胸は潮のたむろ火の家と
あまりあらはに人恋ひ初めし

あなたと呼べず師と呼んで
心の妻でいれるなら
なぜにこれほど海恋し
ひとりで髪を梳きながら
みだれみだれみだれ髪の
少女となりました

やは肌のあつき血汐にふれも見で
さびしからずや道を説く君

今宵もひとり待ちぼうけ
赤い折鶴折りながら
とべぬ一羽を折り殺す
百三十里きみ恋し
みだれみだれみだれ心の
ひとの子の夢です

夢みじかし何に不滅の命ぞと
ちからある乳を手にさぐらせぬ

ひとを恋ふるは罪ならず
永劫くらきうずしほに
すゝり泣いても何になる
かざす牡丹を火と燃やし
みだれみだれみだれ女の
わたしを抱いて!
わたしを抱いて!
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