漣情話~この宿で~

淡(あわ)い着物を 選んできたの
華(はな)はないけど ひそやかに
今か今かと 忍び忍んで
この日をじっと 待ちわびた
あゝ 愛して命も あずけたの
わたし わたし わたし この宿で

お湯に黒髪 揺られるように
ふたり一夜(ひとよ)の 舟にのる
焦がれ焦がれて 乱れ乱れて
この身をまかせ 横たわる
あゝ 女によろこび くださいね
あなた あなた あなた この宿で

深い静寂(しじま)に 漣(さざなみ)の音(ね)が
耳に伝わる 腕の中
夜明けしらじら 波の間に間に
別れの涙 おしよせる
あゝ このまま離れる くらいなら
わたし わたし 死にたい この宿で
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