残り香

あなたは花の香がした
白い部屋 その中で奏でる
子守唄はあまく 空気にほどけてゆく

手をつなぎ ふたり旅した日々
横顔を 見上げながら歩いた
それももう おぼろげな輪郭

私があなたにできることは何
問う声はなぜか喉の奥に
今も残り続けている

あなたは花の香りがした
ゆっくりと 曖昧に微笑む
その気配はあまく 空気にほどけてゆく

やさしくて ひえた手のひらへと
ぬくもりを伝えたくて ずっと
ただ強く 握りしめていた

去りゆくあなたにできることは何
問いかけは宙に浮いたままで 今も

やさしくて ひえた手のひらから
少しずつ 失われるものを
受け止めて こぼれないようにと

去りゆくあなたにできることは何
問いかけは宙に浮いたままで
今も放り出されている
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