親父のハガキ

むかし親父が 戦地で出した
金じゃ買えない このハガキ
幼い頃の 姉さん宛ての
「ゲンキデ アソンデ オリマスカ」
わが子を思う 親心
俺は初めて 読んだのさ

合歓(ねむ)の花の絵 一輪添えて
愛を伝えた 牡丹江(ぼたんこう)
会いたくなって 抱き上げたくて
「シャシンヲ マイニチ ミテイマス」
手書きの文字の 懐かしさ
雨か涙か 染みた跡

辛いことには なんにも触れず
胸に納めた 心意気
仕舞いに一つ 案じたことは
「カゼナド ヒイテハ イケマセン」
わが子を思う 親心
俺と飲もうぜ 供え酒
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