星のとなりの空け者 ~カッパ~

七夕は今年も雨
僕が知っている限り
雨が降らなかったことは
ここ数年一度もない

聞いたことがある
川に引き裂かれた二人の話
その二人には悪いけど僕
天の川自力で渡れるんだ

そんな力なんかより
今は内定が欲しいです
「皿の形が不細工」と
書類で何社も落とされた

靴ひもが結べたら入れると
最近話題のアホ会社に
履歴書という名の短冊を
持参していざ面接へ

「本日の面接官を務める織姫です」
まさかこのシチュエーションで出会うとは
七夕にキャリアウーマンしてる場合か!
そこは上手に有給をとっとけよ!

すぐ織姫に頼まれる
彦星を連れてきて欲しいと
正直気は進まないけど
内定欲しさに請け負った

荒れる川を渡り向こう岸
やけに胸筋が隆起した男が
僕を見つけて感極まり
本気で殴りかかってきた

「カッパより強くなれば俺も川を渡れるはず!
胸筋の神様!彦星はやります!」
ダメだ、思考も思想もオシャカになってる
鬱陶しいのでひとまず折りたたんで

織姫のもとまで引きずった
この瞬間が嫌だったんだ
きっと二人は知らない
この川の両岸は時の流れが違うこと

年老いた織姫
まだ若い彦星
会う術を失った二人は
無理に会ってもこの仕打ち
僕が何か言わなきゃと
言葉を見つけるより前に
こんなに残酷な再会を
二人はただただ喜んだ

二人を川で分かち
二人の時をずらし
二人は雨に泣いて
二人で傷つくこともできず
阻まれて
壊されて
騙されて
隠されて
奪われて

なのにどうしてそんなに素直に喜ぶの?

「愛しているから」
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