婦系図

恋に生きれば この世は狭い
仇な浮名の 切り通し
情け知らずの 夜風に吹かれ
散るか湯島の 白梅も

「命がけの願いが叶って
こんないい男を夫に持って
お蔦は日本一の果報者、
日蔭の身にも花の咲く日があるんだわねェ」

可哀そうだが 別れにゃならぬ
男心は 義理に泣く
月もおぼろの石段道に
こぼす涙の ひとしずく

「ようやく 一緒になったと思う間もなく
生木の技を裂くように
引き裂かれて行く二人の運命だ
あゝ 月は晴れても心は闇だ」

なんと頼もか 天神さまに
好いて好かれた 身の果を
恋の意地なら 建ててもみしょう
お蔦 主税の 比翼塚
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