好きな人

霧雨はこのまま心まで湿らせていくんだ
傘なんかずいぶん前から使い尽くしちゃったのに
知らん顔で街は濡れながら喧騒を包んでいく
蘇る二人は今も瞼の裏ではしゃいでる

出会いと時間が想い出さらってくよ
よく似た背中、目で追ってしまう

笑ってよ、好きな人 切ない記憶に色を添えて
一人だけの自由なんか今はいらないの
強がりもあおさも全部認めるから
声と一緒に聴かせて欲しい
私がずっと知れなかったあなたの淋しさ

流れゆく雲は何か言いたそうに形を変えていく
「何処にいる?」空に向って初めて小声で叫んだ

痩せた心は少しずつ尖って
愛しさの感覚を失う

笑ってよ、好きな人 切ない記憶に色を添えて
一人だけの未来なんか今は希めない
優しい言葉ならそれなりに聞くけれど
ほらね、また何も感じないの
あなたでさえ触れられない孤独を知ったから

伸ばしても届かないの 無念も希望も遮るから
行き場の無い手を繋ぎ止めるのはいつもあなたの方だったね

笑ってよ、好きな人 切ない記憶に色を添えて
一人だけの未来なんか今は希めない
優しい言葉ならそれなりに聞くけれど
駄目ね、まだ何にも感じないの
初めて会った温もりもあなた自身も、もう心の奥にしまわなきゃね
×