宿化粧

外したくない 手枕を
そっと外した 夜明け前
もしも貴方を 起こしたら
未練ごころに また負ける
月の明かりで
別れ紅さす 宿化粧

添えぬ二人と 知りながら
無理を言いたい 女なら
酔って甘えた 明け方は
愛の名残りの ほつれ髪
梳(と)かす小さな
櫛が重たい 宿化粧

結ぶ先から 衣擦(きぬず)れの
音が泣き出す おんな帯
避けて通れぬ 別れなら
先へ延ばせば なおつらい
思い切るよに
閉じる姿見 宿化粧
×