恋の藤十郎

役者頭巾(ずきん)の 濃(こい)むらさきに
そっと隠した 男の涙
どうせこの世が お芝居ならば
河原千鳥よ 何を啼く

楽屋鏡に浮んで 消える
幼馴染の おもかげいとし
仇な仕種(しぐさ)に 身はやつしても
うそに情が かけらりょか

茶屋のともしび 夜風にゆれて
ひとり思えば せつないこころ
浮名ばかりに 影さえ細る
あわれ坂田の藤十郎
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