酒のやど

おんなは翳(かげ)ある 横顔みせて
西から流れて きたという
問わず語りの 身のうえ話
ひざをよせあう カウンター

さすらいの さすらいの 酒をのむ
こぼれ灯の こぼれ灯の 酒のやど
硝子戸ゆすって 雪が舞う

おんなは数えて はたちと幾つ
男につくした 指を折る
遠(とう)のむかしに わかれた女(やつ)を
想い出させる そのしぐさ

さすらいの さすらいの 酒をのむ
こぼれ灯の こぼれ灯の 酒のやど
泣くなよ しみるぜ あの汽笛(きてき)

おんなは離れの ちいさな部屋に
泊まって行ってと 下を向く
故郷(ふるさと)なくした 似た者どうし
夢のかけらが ほしい夜

さすらいの さすらいの 酒をのむ
こぼれ灯の こぼれ灯の 酒のやど
ゆらりとくずれる 酔いごころ
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