含羞航海記

世の中を易く渡れぬ奴等が
縋(すが)る女共力で振り払い
見渡す限りの大海原に
人生賭けると港を後にした

太陽ぎらぎら照りつけているよ
ゆっくり進路を進んで行く船
俗世の汚れを潮に流せば
気分はよーそろ
飛魚跳ねるよ

順風に帆を揚げて
ざぶーん
目指すは新天地
ざぶーん
生まれて来た事が
おお 漸(ようや)く嬉しくなるよ

ところが晴天俄に狂った嵐に
一体何処へ流されてくのか
視界を遮る荒波に揉まれ
奴等はおろおろ
極楽往生かい?

突風が突き刺さり
ざぶーん
マストは粉微塵
ざぶーん
今更大それた選択を悔やみ沈め

波間を馳せる俺達の夢が海の藻屑と消えて行くも
全てを棒に振っても良いから
命斗(ばかり)はどうかお助け!

気が付きゃ彼方に陸が見え隠れ
最後の力を櫂に込めて
ぼんやり霞んだ目玉を擦れば
元来た港に芽出度く逆戻り

大海原に船を浮かべた
ちっぽけな男が居たよ
手も足も出ぬまま沈み
人波に揉まれてる方がましだった
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