ヴァージニティー

『霧の深い森の奥に住まうと言われている魔女。
その魔女の言い伝えは、幾年もの月日を経てもなお、語り継がれる。
信仰の深いその村では、恐れられているわけでもなく、
ただ、願いを叶えるために縋るものとしての象徴になっていた―――

「ハァ…ハァ……!誰か…助けて!」
居るはずのない魔女を探して、森の奥へとただ、走る……』

真白な君のドレス 赤いワイン こぼしたのは誰?
ひびわれた鏡 見つめながらひとり 長い髪をとく
壁にもたれ想っていたよ 飛行船が
いつか 君を そのまま Ah 連れ去る日

白い時の長さ その手で終えたんだね
白い時の中で 激しく風うつ窓をあけた

『迷い込んだ森の奥にあったのは、窓が開かれた小さな家。
そして、透き通るような白い肌をした少女
突然の訪問者に驚くこともなく、
予め、ここを訪れることを知っていたかのように、
彼女は儚げに…、どこか嬉しそうに、こちらに微笑む。

「ウフフ…待っていたわ、やっと来てくれたのね。
さあ…あなたは何がお望みかしら」』

夢を見ていたよ ドレスのしみが今 赤い蝶になる
君のからだから 今夜赤い蝶が 空へ飛び立つよ

遠くキリマンジャロの雪が ひろがり出す
とじた瞳の中を Ah うずめてく

誰にも染まらずに 自由に飛んで行けよ
雪は君の前に 痛みをかくして 降り続くよ

『口を開くよりも早く彼女の元へと駆け寄る。
「願いを…叶えて…、助けて……!!」
触れれば壊れてしまいそうなほどに脆そうな腕が、頬を撫でる。

「だったらこのまま、私になればいい…」

瞳の奥の真意なんて、知りもしない。
この苦痛から、絶望から解放されるのであれば、何だってよかった
それが、これからの未来を捨てることになっても…。』

白い時の長さ その手で終えたんだね
白い時の中で 激しく風うつ窓をあけた

誰にも染まらずに 自由に飛んで行けよ
雪は君の前に 痛みをかくして 降り続くよ

白い時の長さ その手で終えたんだね
白い時の中で 激しく風うつ窓をあけた

かくして、魔女の伝説は語り継がれる。
魔女は消えない。
願いごとの数だけ、魔女は存在するのだから。

「次は…あなたの番…。願い事は、何かしら――――。」

これが偽りの、希望でも―――。
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