故郷の山が見える

いちど東京へ 行くと言いながら
いつも口だけで ひとり野良仕事
老けたおふくろの やせたあの肩を
さすってあげたい
峠 越えれば 俺のふるさと
山が見えてくる

ふるさとの山に向いて 言うことなし
ふるさとの山は ありがたきかな(啄木詩集より)

けんかしたけれど 何故か気があって
どこへ行くんだと 泣いてくれたやつ
月の縁側で 馬鹿を言いながら
ふたりで呑みたい
幼なじみと 共に遊んだ
山が見えてくる

村を出るときは ひとり踏切りで
汽車が消えるまで 背伸びしていた娘
町へ嫁に行き 母となったいま
しあわせだろうか
恋を失くした 遠いあの日の
山が見えてくる
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