天城悲歌(エレジー)

伊豆の温泉(いでゆ)の 宿帳に
妻とはじめて 君の名を
書いた一夜の 明けやすく
思い残して ああ
たどる天城の 紅椿。

見れば椿の 花さえも
二つ寄り添い 離れじと
燃えて葉陰に 咲くものを
山は晴れても ああ
どこが二人の 住みどころ。

こころせまりて しみじみと
君と抱けば ニッコリと
可愛い睫毛に 宿す露
さらば椿よ ああ
湯の香さみしく 春は逝(ゆ)く。
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