花火

父さんは最近めっきり老けたみたい、白髪も増えた
仕事辞めて毎日家で一日中テレビを見てる

お前はどうだ? 元気にしてるか?
嫁も元気か? 孫は大きくなったか?
仕事はどうだ? 金は足りてるか?
お前はいつも短い返事だけ

この私もいつまで生きられるか分からない
いつも最後の小言だと思って聞きなさい

鼻水たらして、泣きべそかいて
泥だらけで私にしがみついた
いたずら坊主で、でも優しくて
私にとってお前は
あの頃のまま

いつの間にか、私を見下ろすほど大きくなって声も低くなった
喧嘩しては家を飛び出した
でも晩御飯にはテーブルについていた

いつかお前の手を引き見上げた夏の花火
このまま時よ止まれ、と
夜空に祈った

東京へ旅立つ電車のドアで
「心配するな。」と笑ったお前
涙でぼやけて見えやしなかった
お前をさらって遠ざかる
あの日の電車

あの日の花火を忘れないでくれ
見上げた背中、そこにいた私を
どんなに遠くへ離れていっても
私にとってお前は

あの頃のまま
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