小判鮫の唄

かけた情が いつわりならば
なんで濡れよか 男の胸が
かつら下地に ともしび揺れて
いつか浮き名の こぼれ紅

(セリフ)
「おらん様お情けうれしゅうは
存じますけれども、所詮この世で結ば
れぬしがない役者の中村 紅雀(こうじゃく)、どうぞ
お諦めくださいませ…と云うても真(まこと)は
明かされぬ、そうじゃどうせ捨て身のつ
なわたり」

好きといおうか 嫌いといおうか
嘘と誠は 両花道よ
仇な夜風に まただまされて
ほろり落とした 舞い扇

(セリフ)
「おらん様 紅雀めがお言葉に
従わぬのはあなたの父御(てゝご)が私の父の仇
ゆえ、なのにあなたは命までもとおっし
ゃった…これが運命(さだめ)のお芝居ならば辛い
涙の牡丹刷毛」

誰の涙か 二片三片(ふたひらみひら)
まわり舞台に 散る花片よ
恋は一筋 生命(いのち)にかけて
なんの恐かろ 小判鮫
×