灰桜

千切って幾千
わが心を
はらはら舞わせる
桜の花びら

差せども薄紅
積もれば薄墨

砕いて幾萬
この肉体を
ぱらぱら零れる
春の夜の霰

凍えた痛みは
裂けて痣となる

どうぞおひとりで
お出掛けくださいませ
宵闇にけして
振り向くことなきよう

烟って幾筋
わが命よ
はらはら舞い飛ぶ
桜の花びら

天に届くまで
寄り添っておくれ

蛇の目傘閉じて
歩いていてください
その肩の先に
ひとひら留まるまで

どうかおひとりで
お出掛けくださいませ
夜風の随(まにま)に呼びます
貴方の名を

蛇の目傘閉じて
歩いていてください
その肩にそっと
ひとひら融け入るまで
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