―― 「芽吹くとき」をはじめ、今作に収録されている「Don’t」「Wet」「しがないふたり(re-arrange ver.)」いずれも歌詞にタイトルのワードが出てくるわけではありませんよね。タイトルは曲の持つイメージから浮かぶことが多いのでしょうか。
たしかにそのパターンが多いかもしれません。たとえば、「Wet」の場合は、歌詞とはまったく関係なくて。トラック自体の湿度の高さ、お風呂のなかで歌っているような感じの音から、思いついた単語です。「Don’t」は、歌詞の持つ否定形の印象から取りました。意外とパッと浮かんだ単語がいちばんしっくり来るんですよね。
―― 楽曲を作る上で、タイアップがあるかないかはあまり関係ないのでしょうか。
昔はタイアップがあると書きづらいと思っていましたが、「芽吹くとき」を書いてみて、意外とそうでもないなと思いました。私は主観でしか書けないというか、自分の体験したことしか書けないんですけど、その引き出し自体もだいぶ増えましたし。自分と共通点を見出せるようにもなっているなと感じます。
―― どんなときに曲ができることが多いですか?
いちばん書きやすいのは、失恋したあとです。あと、最近はどうでもいいようなことも積極的にメモに書くようにしています。たとえば、女の子と飲みに行って、「つけまつげカワイイな」って思ったこととか(笑)。相手の目線が泳いでいることとか。ひとりでも書けるけれど、誰かといたほうが動きや会話からいろんな刺激があるじゃないですか。そのとき自分がどう思ったか、相手にどう思われたか、などを考えると曲が書けますね。
逆に、幸せなとき、何も不安がないときには歌詞を書くのが難しくなります。強いて言うなら、「芽吹くとき」がわりと幸せ寄りの曲ですが、yonigeに幸せ100%の曲はないかもしれません。やっぱり私は、人間の不安定な部分や、心が揺れている瞬間、誰にも言えないと思っていること、恥ずかしいこと、そういうところにスポットを当てたいんだと思います。
―― 歌詞を書くとき、好きでよく使う言葉などはありますか?
まさに「芽吹くとき」でも書いたのですが、最近は「正解」と「不正解」について考えるタイミングがすごく多くて、よく使っています。実は今、書き進めている新曲でも、そういう言葉を使っているんです。
―― なぜ、「正解」と「不正解」に興味を引かれているのでしょうか。
地獄の6年半の恋愛で、「正解を出さなければ」となりすぎていたことが大きなきっかけではありますが、それはバンドに対しても言えることで。長年、バンドをやっていると、「正解の曲を書かなければ」みたいな状態になることもあったんです。でも、意外と不正解も個性になるというか。平均的な回答ではなく、むしろ0点のほうがおもしろいこともある。その個性に惹かれているタイミングなのかもしれません。
―― あまり使わないようにしている言葉はありますか?
誰にでも当てはまるような、普遍的なことは書かないようにしている気がします。逆に、ものすごく個人的な、まったく共感できなさそうなことを書きたい。たとえば、「Don’t」の<赤いTシャツ似合っていない>とか<高いヒール歩けない>みたいな。あと、昔の曲でいうと、「リボルバー」の<自分で食べることのないラーメン 自分で見ることのないプロレス>とか、<君のおへその形すらもう 忘れてしまっている>とか。
普遍的なことを書けば書くほど、誰にも当てはまらなくなっていく気がして。それよりも、99%のひとが共感できなくても、1%のひとに突き刺さる歌詞を書きたいんです。私が憧れたBUMP OF CHICKENも、まさにそういうタイプだと思います。「こう思っていたのは、私だけじゃなかったんだ」と深く刺さって抜けなくなる。そんな歌詞が理想です。
―― これから挑戦してみたい歌詞はありますか?
難しい言葉を使わずに、どんどんシンプルになっていきたいです。「アボカド」とかを書いていた初期の頃は、シンプルでいられたのですが、年数を重ねるごとに難しい言葉を使いたくなってしまって。とくに『健全な社会』や『三千世界』などのアルバムは、難しい表現にチャレンジしていた時期ですね。でもそれを抜けて、今は初心に返りたいなと思っています。
―― 最後に、歌詞とは牛丸さんにとって、どんな存在のものですか?
今日、ここに向かう車のなかでも考えたのですが、やっぱりジャーナリングをしているようなものですね。自分で書いた歌詞だけではなく、誰かの歌詞を読んで「いいな」と思うときにも、その要素が強いです。歌詞によって、「私ってこう思っていたんだ」と気づく。常に自分の気持ちを言語化してくれるものだと思います。
―― 「この気持ちを書きたい」とゴールを目指して書くのではなく、書いてみて、「こう思っていたのか」というゴールにたどり着くんですね。
そうです。顕在意識で書くのではなく、瞑想に近いというか。「今、自分の心にどんな言葉があるんだろう」と瞑想しながら、出てきた最初の言葉を書くことが多いんです。だから、最初は自分でも「何のことを書いているんだろう」と感じるのですが、完成してから、「ああ、あのときのことか」って驚くこともあります。
まさに「芽吹くとき」もそうです。そんな意識はしていなかったのに、メジャー再契約をして再出発した今のyonigeの思いが重なる曲にも聴こえる。そういう奇跡的な答え合わせができるのも、歌詞のおもしろさだなと思いますね。

