「せーの」って誰かと一緒だから口にできる言葉。

―― 3曲目「透明」は、TVアニメ『氷の城壁』のオープニングテーマとして書き下ろされました。

これはもうアルバムの大リード曲と言えますね。『氷の城壁』の原作を読んで、他者との距離感やまわりからの見られ方に悩みながらも、一生懸命もがいて自分なりの答えを見つけていく学生たちの姿に心を動かされて。そういうところを俯瞰しながら、作品になぞらえて歌詞を書きました。

かつ、自分にはタイアップ楽曲を作るとき、「実際に自分が抱く感情も必ず投影させる」というポリシーを持っているんです。だから、「透明」もかなりアニメのストーリーにはリンクしているけれど、僕の心から湧き出る気持ちもあわせて書いていますね。

―― 学生時代を思い出したとき、とくにどのフレーズがご自身に重なりますか?

ベタですが、まず<ありのままでいいんだよ>ですね。誰しも変に着飾ったり、仮面を被ったりする瞬間ってあるじゃないですか。ずっとそのままじゃ人生に疲れてしまう。僕も音楽を始めた頃は、すべてのひとに好いてもらいたかったんです。でも、それぞれ考え方も好き嫌いも違うから、そんなことは難しくて。今は、ありのままの自分で活動していくなかで、賛同してくれるひとを最大限まで増やしていきたいと思っています。

あとは、サビの<大嫌いから好きになっていくこの瞬間の名前は 君と名付けたいな>も好きですね。僕は正直、アンチから批判を浴びせられるのは、まったく気にしないし、むしろプラスに捉えられるんです。そこから得られるものもあったりするので。いちばん悲しいのは、“好きから大嫌い”になっていく姿を見ることで。ファンのひとが離れていくのは、かなり凹みます。だから、そういうことをしないように意識しているんですね。

逆に、<大嫌いから好きになっていく>姿はすごく嬉しくて。「ひっくり返すことができるんや!」という希望になります。プライベートでも、第一印象はよくなかったけれど、関わってみたらいいひとだったりすることってありますよね。マイナスからプラスに転じるときって、嬉しい。そういう現象に名前なんてないけれど、そのポジティブな気持ちをわかちあいたいなと思ったので、このフレーズを書くことができてよかったです。

―― 個人的には<最少人数はいつもふたりからだよ>というフレーズも好きです。ここはどのような意味合いで書かれたのでしょうか。

ポジティブな思いで書きましたね。言い換えると「ひとりじゃないよ」ということです。何事も定員がひとりなんてことはない。ここは僕も好きなフレーズです。改めて「透明」の歌詞は、すべてが好きだなと思います。作品にもリンクしつつ、自分の言いたいことも表現できたので、お気に入りの1曲です。

―― 雄大さんが、今作のなかで他に、とくに「書けてよかった」と思う歌詞はありますか?

カノープス」かな。僕が人生でいちばんしんどかった時期に書いたフル実体験の歌詞です。しかも感情がピークのとき、リアルタイムで書いたので純度が高い。当時、何もうまくいかなくて、うつ病のようになってしまって。でもそんなとき、いつも一緒に遊んでくれる先輩とかが助けてくれたんです。宮古島で星を見て、涙を流したりして、救い上げてもらいました。そういう大切なひとへの気持ちを書いた思い入れの強い1曲ですね。

―― どのフレーズが歌の核になりましたか?

<未来へ今すぐ ドキドキしちゃう方へ「せーの」で>だと思います。「せーの」って誰かと一緒だから口にできる言葉じゃないですか。2番のサビにも<ひとりじゃないんだよ いつでも隣にいるんだよ>と書いていますが、僕はやっぱり人生のテーマに「ひとりじゃないよ」という思いがあるんですよ。そして、常に“ドキドキする方へ”走ってきた。だからこれからも、大切なひとたちと一緒に進んでいけたらいいなと願っています。

―― <ドキドキしちゃう方へ>一緒に飛んでくれるひとがいる、ということ自体が支えになりますね。

そうなんですよ。僕は基本的に、「誰かのおまもりになれば」「誰かを後押しできれば」という気持ちで、曲を書くことが多いんです。でも、「カノープス」だけは自分に向けて書いたもので、自分の曲に自分が救われたんです。“カノープス”は、日本では南の島じゃないと見えない星で、僕自身が宮古島で感じたことを書き残せたこともよかったですし。自分にとってのいちばんのおまもりになる曲ができましたように思います。

―― 歌詞とは、雄大さんにとってどのような存在ですか?

書いてきた歌詞には、嘘がひとつもなくて、その時々の僕がいるんですね。10代のとき、20代のとき、30代のとき。そうやって積み重ねていくものだから、長い年月をかけて書き続けていく日記であり、いつかは年表みたいになるものなのかもしれません。

―― みちょぱ(池田美憂)さんと大倉士門さんご夫妻に書かれた「アイビー」なども、そういう素敵なご縁の記録でもありますね。

そうですね。「アイビー」もふたりに向けて書いたものでありながら、「Live, Laugh, Love」と同じように、“いつか自分が結婚したとき、こういう気持ちになれたらいいな”という思いを歌にしたんです。そう思うと、改めて歌詞は自分の人生そのものですね。僕が死んだあとも残っていく、大切な存在です。


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