いつでも誰かと一緒になれるし、いつでもひとりになれるメンタルでいたい。

―― 歌詞面や価値観で変わってきたところはありますか?

私としては、あまり「コレちゃん、お姉さんになったな」という気持ちをみんなに与えたくないんですよね。恋しているひとって、年齢関係なく共通の気持ちがあるじゃないですか。だから、ずっと変わらずにいたい。逆に、みんながコレサワをどう思っているのか気になります。大人になったと感じるのかなぁ。

―― ご自身の感覚としては、どちらの声のほうが多いですか?

「変わったね」とは言われない気がします。むしろファンのみんなのほうが成長していくんですよ(笑)。「小学生の頃からコレちゃんを聴いていた私も、大学生になりました」とか、「結婚して、子どもが生まれました」とか。あと、「昔はわからなかったけれど、恋をして、今はこのラブソングの意味がわかるようになりました」とか。そういうお知らせが嬉しいですね。私はみんなが何歳になっても、キュンキュンできる曲を書き続けていきたいです。

―― 今作『あたしの恋人E.P』は、全5曲とも“あたし”が軸になっていて、恋をしていても“あたしらしさ”を失わずに在ろうしているように感じました。それはコレサワさん自身も大事にしているところなのかなと。

おっしゃるとおり。恋をしていたとしても、自分の人生のハンドルを誰かに任せたくない気持ちがものすごく強くて。たとえば、付き合うひとによって、自分のやりたいことがブレたり、生活を握られたりするのは、絶対にイヤです。いつでも誰かと一緒になれるし、いつでもひとりになれるメンタルでいたい。幸せも不幸も、自分次第だと理解しているし。そこを聴いてくれるひとにも伝えたいなと思っているんです。

―― その思いは、とくに3曲目「前髪」の<愛されている この世界に もう君の彼女じゃなくなるけど あたしを遮るものもない>というフレーズにも表れていますね。自分がブレるような恋なら、手放したほうがいいと。

そうそう!「その服、その髪型、似合ってないよ」なんて否定してくる男とは、早く別れなさいというメッセージを込めています。私はイヤなことはイヤだとすぐ言えてしまうタイプなんですよ。でも、そうじゃない女の子も多いだろうし、別れられないカップルっているじゃないですか。私はみんなにまず、自分自身のことをいちばん好きでいてほしいから、「前髪」がちょっとでも届いたらいいなと思います。

―― 「前髪」は、いち髪「流し前髪キープコーム」CMソングですが、どのように歌詞のイメージを膨らませたのでしょう。

いち髪さんは、「このワードを入れてほしい」というオーダーはなくて、かなり自由に作らせていただきました。今回、れ子ちゃん(※コレサワビジュアル担当のクマのキャラクター)も初めて前髪をあげてみたので、まず<前髪>というワードは入れたいなと。そこから、女の子が前髪を上げて、自分がいちばん好きなスタイルで、オシャレをして別れ話をしに行くという、切なくもスカッとするようなストーリーが見えてきた感じです。

あと、「流し前髪キープコーム」という商品は“風に吹かれても崩れない”というのが、ひとつの強みでして。だから、風を感じるような曲にしたいなとも思いました。天気がいい日、ハッピーな日って、風が頭をなでなでしてくれているような感じがするんです。「私のために世界がある」って主人公みたいな気持ちになるというか。そういう感覚に、みんなにもなってほしくていちばん最初にサビのフレーズが生まれましたね。

―― そして、<あたし>のみならず、<君>の特徴もわりとしっかり見えてきます。それこそ髪型だったり、彼女に対する理想像が明確にあるタイプで。

たしかに。彼は<待ち合わせの時間に間に合ったことはない>ですし。主人公の<あたし>になりきって歌を書いていると、自然と<君>のことも見えてくるんですよね。どういうひとと別れたのか。どんなイヤなところがあったのか。<君>のイヤなところを、悪口になりすぎないよう、どれぐらい説明するか考えました(笑)。

―― 一方で、5曲目「優しくない女の子」も同じく失恋ソングですが、こちらはあまり<君>の輪郭が見えません。あえて具体的には描かれてないのでしょうか。

「優しくない女の子」の場合は、そんなに<君>のことを考えてなかった、というほうが正しいかもしれません。別れたばかりの女の子が、家でぽろぽろとギターを弾きながら後悔を歌っているイメージだったので。今、問われて初めて気づいたのですが、おそらく<あたし>のシチュエーションによって<君>の見せ方も大きく変わっていますね。<君>について説明したい曲と、そうではない曲があるんだと思います。

―― 「優しくない女の子」は、どんなときにできた曲ですか?

冒頭の<近所のスーパー 繋がれた犬 触れたそれだけであたしはハッピー>というフレーズ、これを歌いたくてしょうがなかったんです(笑)。私、飼い主を待っている繋がれた犬が大好きで。あの子たちって、触られたい子と触られたくない子がいて、近づいてそれを見分けるんですよ。でも、なかなか触れない。だからこそ、触ってほしいタイプの子に出会えたときは幸せで、めちゃくちゃ遊ぶんですね。

そして、触れた日にはいつも誰かに、「今日の犬は触れたんだよ!」って言いたくなるんです。わざわざ言うほどのことではないんですけどね。この実体験をいつか歌にしたいと思っていて。毎回、EPには弾き語りの曲を入れるようにしているんですけど、今作では他にしっとり寂しい曲がなかったので、「今だ!」と思ってこの曲を書きましたね。レコーディングの前日に作って、「明日これを歌います」ってスタッフに送りました(笑)。

―― この歌は、別れたのが<三日前>というところもポイントですね。おそらく自分のなかで、まだ別れたという現実を受け入れ切ってない気がします。

そうなんですよ。しかも別れてから3日って、下手したらまだよりを戻せるじゃないですか。

―― その可能性も考えてしまうから、<親友にも言えず>。

実際、私は友だちに「別れた」と報告を受けた数日後に、「やっぱりよりを戻したんだよね」と言われたことがあるんですよ。ええー、あんなに相談に乗って励ましたのに!って(笑)。だから、私は友だちから別れ話を聞いても少なくとも5日は信じないことにしていますし、よく言えばいろんな可能性のある日数だなと思っています。

―― <結婚したいって思ってたのに 君と幸せになりたいんじゃなくて 君となら不幸でも楽しそうだと思った>というフレーズもリアルです。そう思えた相手でも別れてしまうのはなぜでしょうね。

本当に。この3行は「なんで?」ってすごく考えてしまいますね。まわりを見ていても、長く付き合っていて、仲もよさそうだったのに、別れてしまった子はわりといて。結婚しても、なんだか幸せそうじゃない子もいるし。これは私も経験があるんですけど、きっと一緒にいすぎてうまくいかなくなることってあるんですよね。なぜか言い合いになったり、好きなのにすれ違っていったり。

―― 一緒にいればいるほど<優しくない女の子>になる時間が増えて、コレサワさんがお話されていたような“自分自身のことをいちばん好き”な状態でいられなくなるのかもしれませんね。

私も優しくなくなってしまいがちなんですよね。ヒステリックになるのがいちばんイヤなのに、言いすぎてうまくいかなくなってしまう。だから、“言わない”という選択をする女の子って羨ましいし、なりたい女の子像でもあるんですよ。ただ、我慢をして幸せになれるのかな…。難しいですね。私のように言いすぎてしまう子にも、言いたいことをうまく言えない子にも、いろんな捉え方で「優しくない女の子」を聴いてほしいなと思います。

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