30周年目前の“今のGLAY”が光を当てたい、コロナ禍に生み出された全7曲!

 2023年9月27日に“GLAY”が『HC 2023 episode 2 -GHOST TRACK E.P-』をリリースしました。TAKURO(Gt.) が“相棒”をテーマに制作した「Buddy」や、HISASHI(Gt.)作詞作曲の「Pianista」、TERU(Vo.)作詞作曲の「刻は波のように」、そして今年のバンドコンセプトの軸となったJIRO(Ba.)作曲の「THE GHOST (80KIDZ Remix)」を含む全7曲が収録。今回はメンバーのTAKUROにインタビューを敢行。大きな喧嘩もなく続いてきた4人の関係性、GLAYのなかで度々起こる不思議なシンクロニシティ、そしてメンバーそれぞれの人生や本音が表れている歌詞についてなど、じっくり語っていただきました。30周年目前の今の思いを、楽曲と併せて受け取ってください。
(取材・文 / 井出美緒)
Pianista作詞・作曲:HISASHIFly to the sky Fly to be free 希望の彼方 限界は無い
Beyond the field Beyond the fear 奇跡の未来へ Just like a game
真夏に口ずさんだメモリーもっと歌詞を見る
仲のよさはギターの名リフ以上に大切なんじゃないかな。

―― 前回のTAKUROさんのインタビュー、ファンの方から多くの嬉しい感想をいただきました。

GLAYはなかなか歌詞について訊かれないですからね。メンバー間でも、TERUとは歌入れのときに現場で“てにをは”の直しを含めいろいろ話すけど、HISASHIやJIROとはまったく。それこそHISASHIの歌詞なんて、渡されるたびに謎解きのようで。だけど真意を本人に確かめることはなく、それぞれの歌詞を読みながら勝手に、「あぁ今こういうことを考えているのかぁ」って。

今作の「Pianista」に関しても、非常にHISASHIの内面を映しているんだろうなぁ…と想像したり。メロディーもアレンジもおもしろいんだけど、シンプルに言葉で持っていかれる。この曲は本当に歌詞が大好きですね。

―― TAKUROさんから見て“HISASHIさんらしい歌詞”だと感じますか?

うん。HISASHIは速い展開で動いているこの情報社会と密接に繋がっている感じがするから。俺はネットに近い生き方をしていないので、HISASHIの歌詞のなかで知らない最近の言葉に出会う。そういうのは勉強にもなりますね。

―― HISASHIさんはご自身のYouTubeチャンネル『HISASHI TV』もなさっていて。今年の7月末にTAKUROさんがゲスト出演され、おふたりでトーク配信をしていた回も拝見したのですが、すごくおもしろかったです。

俺らはいつも飲み屋であんな感じ! カメラがあろうとなかろうと、オンオフまったく変わらないんじゃないかな。俺からしたら3人は何より「友だち」で、「仕事仲間」なんて意識は5、6番目に来るの(笑)。

だからそれこそ『HISASHI TV』でメンバー全員でやった「カタカナ禁止飲み」のときいつだかHISASHIが、「JIRO、本当にツラかったらやめていいんだよ!」って言ったのも本音だと思うんだよね。でもJIROは毎回ちゃんと待ち合わせ場所に来てくれるし、頑張ってくれるから、やっぱりいいやつだなぁって。

―― GLAYのみなさんは一緒にいるときのバランスがよいなぁと思います。

photo_01です。

多分ね、バランスよくなったんだと思う。もともとそうじゃなかったんだよ。でもJIROなんかは途中から、「俺も一緒に乗っかりたいけど、この年上3人こんなにアホなのか。それなら俺だけはどんなに悪乗りしようが、絶対にこのオールを離さない。オールを失った小舟状態になってしまう…」って意識したんだと思う。本当に申し訳ないよね(笑)。だけどそれがいつのまにかいちばん心地よい形になった、この30年間でありますね。

―― だからこそこの4人で続いてきたんですね。

THE ALFEEさんとか、スターダスト☆レビューのみなさんもそうだけど、仲のよさはギターの名リフ以上に大切なんじゃないかなと思う。GLAYほどわちゃわちゃする必要はないけど(笑)、当たり前に意思疎通が機能していて、ちゃんと大切な情報が伝わって、それぞれが咀嚼して受け入れられること。人間ってたやすく誤解が生まれて、心が離れたりするから。GLAYを守りたいからこそ、4人4様で気をつけてきたのかもしれないですね。

―― また、先ほどもお話されていましたが、GLAYは来年で30周年を迎えられるんですよね。デビューされてから今に至るまでの活動を折れ線グラフで表すとしたら、どんな形になると思いますか?

俺の個人的なマインドで言うと、デビューでピューンと上がって。東京ドームのとき、平行線。USJのとき、平行線。独立して大変だったとき、平行線。で、氷室京介さんとのセッションで、バキューン!(笑)。あのときは本当に嬉しくて楽しくて幸せでした。あれがピークで今は老後。余生ですね。

でもね、GLAY自体もわりとデビューがピークで、あとはピューッと平行に伸び続けている感じなんですよ。いわゆる商業的なことで言えば1999年の『GLAY EXPO』だとかいろいろあるけど、それぞれの人生という意味で言えば、誰かが落ち込めば励ましてくれる3人だから、「このときはどん底だった」とか「きつかった」とかがほぼない。だからこそGLAYって続けられるんだなぁって。

―― 何があっても、メンバーみなさんのマインドが大きくブレることがなかった。

そうそう。あと、他のインタビューで、「なんでそんなに緊張感を持って、バンドをコンスタントにやれるんですか?」と訊かれて気づいたんだけど、GLAYにはロック幻想が合ってなかったんですよ。プロとしての体調維持はもちろん。「毎回、最高のライブじゃなきゃならない」とか「最高の曲じゃなければリリースしてはならない」とか、完璧じゃないことを許さない音楽の土壌があるけど、そんなこと本気で思っていたら1曲も出せない。

俺らは過去にたくさん、「あの歌詞はイマイチだったな」とか「もっとやれたのに途中で手を抜いたな」とかあって。風邪で声が出ないときも、演奏の調子が悪いときも、思ったよりヒットしちゃって戸惑うこともあった。人間だもん。でもそれを飲み込める。振り返って、反省として活かせる。「こんなアホで未熟な自分だけど許して!」っていう人間本来の感情みたいなものを4人が持っているから、GLAYは楽しくやれているんだと思う。

それに、曲や歌詞や演奏が、メンバーのルックスが、とかそんなことと同じくらいスタッフワークが素晴らしかったから。どんなにすごいことをしても、逆にどんなにヘマをしても、俺ら4人だけのこととはどうしても思えない。だから関係者を集めて、どこでどう間違えたかを話し合って反省する、ただその繰り返しで。決して誰のせいでもなければ、誰の手柄でもないんですよ。いちばん大切なことはGLAYをおもしろがってもらえるか。GLAYと仕事してよかったと思ってもらえるか。そこだけが自分のリーダーとして、社長としての役割かな。

―― 『HISASHI TV』のTAKUROさんとHISASHIさんのトークでも、過去の失敗話さえお酒のつまみとして楽しく話されているおふたりが印象的でした。

そうなんだよ。失敗したら失敗したで、この話を10年は飲み屋でこすってやる!みたいな連中なので(笑)。そういえば、今でも飲むと話す話題があって。2019年にメットライフドーム(現:ベルーナドーム)で「良いGLAY」と「悪いGLAY」という変なコンセプトでライブをやったんですよ。そのときHISASHIが、「もうお客さんをほったらかしにして、頭から「誘惑」を10曲続けてやりたい」って言ったの。俺はおもしれぇなぁと思ったけど、JIROがあからさまに嫌な顔していて(笑)。歌うTERUなんかもっとしんどいし。だからそのときは、「暴動が起きるからやめてくれ」とHISASHIをいなしたんだけれども。

酔っぱらうとHISASHIは未だに「やりたかった」って言うんだよね。本当にやりたかったんだなと。だからまぁ…1回ぐらいやってみるかなぁ、やりたいことやらせてやりたいなぁ、って気持ちもちょっと今ありますね。頑張ってくれているし、ご褒美に。黒歴史決定なんだけど(笑)。でもHISASHIのそういう発想はとても貴重だし、GLAYを動かしている原動力だったりします。俺ら4人楽しく穏やかに、でも燃え上がりながらやっていますね。

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