あなたがいるから鳴ることができる。ヒット曲「Start Over」も収録の最新アルバム!

 2023年6月14日に“THE BEAT GARDEN”がニューアルバム『Bell』をリリースしました。今作には、大ヒットを記録したドラマ『六本木クラス』挿入歌「Start Over」をはじめ、初CD化となるデジタルシングル曲に、新曲5曲を加えた全9曲が収録されております。インタビューでは、メンバーのUにお話を伺いました。あがきもがきながら努力を重ねてきた3人の軌跡と想い。大きな転機となった「Start Over」。そして声質の異なるスリーボーカルで届けるラブソングの歌詞について、じっくり語っていただきました。今作と併せて、インタビューをお楽しみください…!
(取材・文 / 井出美緒)
心音作詞:U 作曲:THE BEAT GARDEN逢いたいを奪われても 失くしたもので溢れても
忘れられなかったよ あなたと奏でた希望を
それでも消えない僕らの
その胸の奥 鳴り止まない心音を 未来は聞き逃さない
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たとえこの3人で失敗しても、何をやっても楽しいだろうなと思った。

―― Uさんには今作も含め、多くの歌詞エッセイを執筆いただいています。もともと文章を書くことや気持ちを言葉にすることは得意ですか?

エッセイは言葉の制限がないので、いつも楽しく書かせていただいているんですけど、書くこと自体はすごく苦手なんですよ。中学時代にポエムを書いていた経験もないし、歌詞を書くようになったのはグループを組んでからで。ただ、母が歌詞の学校に通っていたり、おばあちゃんが習字の師範だったりすることもあって、文字は好きだと思います。

―― ご家族が言葉に携わっているのは心強いですね。お母さまから歌詞についてアドバイスなどはあるのでしょうか。

あります。たとえば、上京のことを書いた「」とかも、「ここの言い回しがよくない」とか言われたりしました。あと「Over」に<氷みたいに僕に溶けても>ってフレーズがあるんですけど、あれ実は母のアイデアなんです。昔の方の俳句とかも好きみたいで、そういう表現を提案してくれたりもしますね。

―― Uさんが人生で最初に書いた歌詞って覚えていますか?

中学2年生の頃にバンドを組んでいて、そのときに1曲だけ「アトム」というタイトルの歌詞を書きましたね。鉄腕アトムを主人公とした<君のヒーローになりたい>みたいな内容の歌でした。

―― メンバーのREIさん、MASATOさんとは大阪の専門学校で出会ったそうですね。改めて振り返ってみると、音楽のパートナーとなる決め手は何だったと思いますか?

REIくんとMASATOくんとは最初、友だちとして出会ったんです。ふたりはソロでやりたい気持ちや「絶対に売れるんだ」という意志が強くて、僕も含め根拠のない自信があった。勘違いできているというか。それを会話のなかで感じて。たとえこの3人で失敗したとしても、何をやっても楽しいだろうなと思ったんです。そんな親友と出会えたので、一緒にやっていこうと思いました。

―― 上京してすぐに事務所にデモテープと手紙を送り続けたというお話も拝見しました。その原動力もやはり3人の自信だったのでしょうか。

2人はやっぱりすごく自信があって、どんな事務所でも受かるだろうと言っていました。でも僕は意外とそうじゃなくて。ただ、自信がなかったからこそ逆に、事務所に入ったほうがいいと思ったんです。引っ張ってもらえないとダメだろうなって。

photo_01です。

あとたくさん事務所があるなかでも、イドエンターテインメントさんを選んだのは、FUNKY MONKEY BΛBY'Sさんとback numberさんが所属していたからでした。僕はback numberさんの「はなびら」が好きで、いつも歩道橋の上でひとり弾き語りをしていて。ファンモンさんも僕ら3人とも共通して好きだったんですね。で、アーティスト数は少ないけれどみなさん売れているから、僕らにも労力をかけていただけるだろうと。そんなちょっとあざとい気持ちもありつつ(笑)、この事務所に入りたいと思いました。

―― 今、THE BEAT GARDEN楽曲は歌詞先行公開をすると注目度ランキング上位に入ることも多く、歌詞人気の強さを感じます。Uさんはご自身の歌詞のどのようなところが支持されていると思いますか?

よくファンの方に言っていただけるのは、ダブルミーニング的な言い回しですかね。たとえば「それなのにねぇなんで?」の<畳まない服も言い訳も重ねるのが得意で>みたいなフレーズとか。クリープハイプの尾崎世界観さんはそういう表現が素晴らしいですよね。<痛い>と<居たい>で重ねていたり。それは僕も好きな表現法なので、THE BEAT GARDENをもっと好きになってもらえる要因のひとつとしてある気がします。

あとは、やっぱり実体験をもとにしていないと書けない部分がありまして。そこは嘘なく書くことを大切にしているので、伝わるひとにはちゃんと伝わっているのかなと思います。

―― また、今作の収録曲「High Again」の歌詞は、新しいTHE BEAT GARDENにも感じましたが、初期のアルバムを聴いてみると実はこうした英語詞が多い楽曲こそ原点だったんですね。

そうなんですよ。以前は、歌詞はメロディーのためのもの、という認識がもっと強くて。夏フェスとかでカッコいい音に身体を揺らしてもらえたら、それが自分たちの正解だったんです。だけど、その気持ちが変わっていった明確な分岐点がありまして。

それが2018年にシングル「僕がいる未来」リリースイベントで始めた握手会です。作った曲たちを紐解いて受け取ってくれていたり、日々の励みにしてくれていたり、そういうファンの方々の想いを直に受け取ることができて。「あぁ、歌詞ってこういう関わり方ができるんだ」って初めて感じました。そこから、「THE BEAT GARDENは、なるべく日本語の歌詞で伝えていきたい」と思うようになっていったんですよね。

―― 年齢や経験を重ねるにつれ、歌詞で書きたいことは変化してきたところがありますか?

弱い部分を書くことに、少しずつ抵抗がなくなっている感じはします。自分で言うのもアレなんですけど、まぁちょっと…イケメンっぽい3人で(笑)。この面構えで、情けないことや女々しいことを歌う恥ずかしさはずっと自分のなかにあったんですね。でも30歳を超えて、それも味として解釈できるようになったというか。そういう経験をしていてもおかしくないんだよ、って自分に言ってあげられる年齢になったのかもしれません。

―― THE BEAT GARDENは3ボーカルグループという形であるのも特徴的です。それぞれの歌声を言語化するなら、どんな違いがありますか?

まず僕はもともとロックバンドが好きで、ちょっと声がハスキー。ミッドとハイだったら、ハイ寄りでキンキンした感じもある。声をエディットするときは丸くする作業をするんですね。そういうピンと張った糸みたいな声質が僕だと思います。

REIくんは普通のひとよりも息の量が少し多めに出る。だからエアリーで優しい。あと、彼はRAPがバックボーンにあるんです。初めて行ったライブがカニエ・ウェストらしいんですけど、小学生でカニエの最前列にいたのは多分、彼しかいないんじゃないかな(笑)。そして、ダンスが得意で、リズムを取る拍が後ろ気味に来るので、横ノリの曲が上手。R&Bっぽい曲もオシャレに歌いこなせる声質だと思います。

MASATOくんはLDHさんとか、とくにEXILEのATSUSHIさんが好きで。J-POPで育ってきた子なので、ポップスをすごくハートフルに歌いこなせる。ロックで張るというより、温かみのある声。たとえば家族のことを歌うバラードとか、ウエディングソングとか、幸せな曲にマッチする声質だと思いますね。

―― 3人でまったく声質が異なるんですね。

だから歌割りを考えるとき、たとえ誰かの歌う分量が多くなってしまっても、それぞれが似合う言葉を選んでいますね。この3人の声質の違いは少しずつ、僕らの強みになってきてくれたかなと感じています。

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