身近に置けば、優しい気持ちになれる太陽みたいなミニアルバム…!

 2022年7月6日に“Saucy Dog”が6th Mini Album『サニーボトル』をリリースしました。今作には、フジテレビ『めざましどようび』テーマソング「優しさに溢れた世界で」や、『WOWOWオリジナルドラマ 神木隆之介の撮休』主題歌「ノンフィクション」をはじめ、タイアップ曲が多数収録され、彼らの“勢い”と“今”が詰め込まれた1枚となっております。今回は、石原慎也(Vo.Gt)にインタビューを敢行。書いたことで、自分自身が変われた1曲とは。リアルな主人公像の作り方とは。そして、自身がお気に入りのフレーズも全曲ご紹介!歌詞についてのお話をじっくりお伺いしました。
(取材・文 / 井出美緒)
ノンフィクション作詞:石原慎也 作曲:Saucy Dog最近の夢は大体 高校か中学の同期だ。痛いや。
嫌々今を生きてんのは俺だけ? 時代は有耶無耶になっていく
舞台裏で泣いている 腐敗すら願っている
でも誰もが解かっている
踏み出した足、ドアの向こう側へと まるごと愛せばいいのさ
期限付きの悲しみに 浸るのはもう辞めてしまえ
止まない雨もいつか止んで 乾いた場所は誰も知らない
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バンド活動の波をグラフで表すとしたら、√みたいな感じ。

―― 慎也さんのインスタライブを時々、拝見するのですが、どうしてこんなに的確に恋愛相談に答えられるのかといつも驚きます…!

いやぁ…かなり失恋もしていますからね(笑)。ただ、恋愛経験を重ねていくなかで答えを見つけるというより、歌詞を書いているうちに、自分でも意識していなかった気持ちに気づくことが多いんですよね。「あ、このとき俺って、こういうふうに思っていたんだ」とか。

―― ご自身は今、どんなことで悩むことが多いですか?

音楽活動をしていくなかで、どう進んでいけばいいのか、どう見られたいのか、そういうことをよく考えるかもしれません。結構、メンバーとの考え方の違いもあるんですよ。俺はわりと、チャンスがあったら挑戦していきたいし、選り好みするのもまだワガママなんじゃないかと思うんです。だから、やらないで後悔するより、やって後悔したい派なんですよね。

でも、ゆいかは慎重で、やらないをしっかり選択肢として持っている。ふたりともしっかり考えるんですけど、考えた上で出す答えが噛み合わなかったり。常にそのバランスを取りながら進んでいる感じですね。ただ、メンバーの2人にはいろんな面でいつも助けられているなと思います。

―― これまでのバンド活動の波をグラフで表すとしたら、どんな形になると思いますか?

えーっと…ルートみたいな感じですね。

―― √ ですか。

そうそう。「いつか」で知ってくれるひとがバッと増えた。けどそこから「いつか」ばかり聴かれることが多くて、1回下がりまして。で、「シンデレラボーイ」でまたバーン!っとわかりやすく上がって。「いつか」以上に聴いてくれるひとが増えて。マジで√の形そのものですね。で、今はその√の平行のところにいて、この先も平行を保ちつつ、できることならまた右肩上がりを目指していきたいなという感じですね。

―― ご自身でいちばん最初に書いた歌詞って覚えていますか?

高校の頃に書いたやつかなぁ。「黒電話」ってタイトルだった気がします。めちゃめちゃダサかったですよ(笑)。えっとね…<リリーン リリーンと 鳴り響く この胸の奥の黒電話>っていう…。でもそのあと、高校在学中に「いつか」を書いて。

―― そんなに早く書かれた曲だったんですね。

そう、歌詞というより、箇条書きに思い出とか気持ちをバーッと書いていて。で、前のメンバーのときは、曲を作っていたのがベースで、その曲に歌詞とメロディーを乗せるのが俺の役だったんですね。でも、なかなか歌がハマらなくて。今のメンバーになって、やっと「いつか」でちゃんと書いてみるかって感じでしたね。

―― 世に出ていない「黒電話」のほうもラブソングだったのでしょうか。

photo_01です。

いや、当時のSaucy Dogのときは、ほとんど恋愛の歌って書いてないんですよ。「黒電話」はどんな内容だったかなぁ。なんか人生とか自分に対しての曲だった気がします。

実は今も、恋愛の曲を書きてーと思って書き始めることはそんなにないんです。書いているうちに、「あ、この感じだと恋愛の歌がいいかも」というか。パッと頭に浮かんだ文脈が恋愛関連だったりすると、そこから繋げて作っていく感じなんですよね。

―― ワンフレーズから物語が生まれていくんですね。

そうそう。たとえば「いつか」も、<押しボタン式の信号機を いつも君が走って押すくだり>ってフレーズがあるんですけど。あれも<くだり>というワードだけ最初に出てきたんです。あの…オードリーの若林さんが、春日さんにツッコむとき、「そのくだりもういいよ!」って言うんですよ。それを聞いたとき、「あ、<くだり>ってなんか歌詞にできないかな」と思って、そこからブワーっと書いたんです。

―― これまでの活動のなか、歌詞面で変化を感じるところってありますか?

難しいことを書かなくなったなと思います。昔はもっと言葉遊びが多かったし、難しい感じのことを書いていたんですよ。自分の存在意義とか、哲学みたいな。それはそれでよかったんですけど、そういうものを書かなくなったなぁ。なんでだろう…。

本を読まなくなったのかな。なんか活字が苦手になっちゃって。俺は読む時期と読まない時期がすごくはっきり分かれていて、今は読まない時期です。昔はすごく好きな作家さんがいて、そのひとの作品をよく読んでいたんですけど。

―― たとえばどんな本を読んでいました?

市川拓司さんですね。『恋愛寫眞 もうひとつの物語』とか、市川さんの本は全部持っています。文脈が綺麗なんですよ。情景が浮かぶというか。それが印象的で、今も影響を受けているところは大きいです。

そういう意味だと、今回のアルバムでも「404. NOT FOR ME」の最初のフレーズ<夕立みたいなふたりはじっと終わりを待っていた 甘い匂いを置き去りに君は走り出す>とか、自分が好きな綺麗な歌詞を書けたかなと思っていますね。

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