音楽と結婚しているみたいなことなのかなって思えた。

―― アルバムタイトル『ダイヤモンド』とは、どのようにたどり着いた言葉ですか?

2019年に『ゴールデンエイジ』ってミニアルバムを作って出したんですけど、そのタイミングでもう、スタッフ間でも「ダイヤモンドってタイトルが良いんじゃないか」って話が出ていたんです。僕も良いなって思っていて。ダイヤモンドって言葉は、輝きが含まれているのに、どこか生活感があってちょっといなたい感じもする。それが石崎ひゅーいを表現するときにピッタリくる言葉だなって。ただ、2019年のそのタイミングはベストアルバム『Huwie Best』を作って、「さぁ次の扉を開けよう!」みたいなときだったので、かなり僕も前のめりなマインドだったんですよね。だから『ダイヤモンド』という言葉はまだ早いかなと思っていたんです。

それが2020年2021年になって、コロナ禍になって、生活だったり、音楽を作る環境だったり、演奏する環境だったりが変わっていって。そうなったときに、ひとと会えない分、音楽とすごく密になったなと。とにかく音楽のことを考えざるを得ないし、音楽ってどんなときも苦楽をともにするパートナーなんだって思ったんですよ。どんな時代になっても、音楽はそばにいてくれるし、そばにある。要するに音楽と結婚しているみたいなことなのかなって思えたんですよね。そういう心情と『ダイヤモンド』って言葉がちょうど合致した。だから「今だ!」という感じで、このアルバムタイトルになりましたね。

―― コロナ禍というのは、歌詞の言葉選びにも影響がありましたか?

めちゃくちゃありました。すごく混とんとしていたし、いろんな弊害がみんなの生活のなかにあったから、そんなときに届けたい歌、届けなきゃいけない歌っていうのは、シンプルなものだろうなと思って。寄り道しないで、まっすぐ心に届くようなものを作らなきゃという意識は強くありましたね。

―― 1曲目「ジャンプ」は、2019年に私立恵比寿中学に提供された楽曲ですが、不思議とコロナ禍により響く力がありますね。

そうなんですよ。それもあって今回セルフカバーさせてもらいました。コロナ禍でみんな押さえつけられて、行き場のない悔しさを抱えながら生活していたと思うんですけど。そういうのを取っ払って、2022年は飛躍の年にしたい、何かを超えてゆくような時代にしたいって感じているひとたちって、いっぱいいるだろうなって。それは僕もそうで。しかも2022年はデビュー10周年なんですよ。そう考えたとき、この「ジャンプ」って曲がピッタリでした。だから今、セルフカバーしなくちゃ!って。

―― 先日、私立恵比寿中学 × 石崎ひゅーいの『THE FIRST TAKE』を拝見しまして。エビ中さんの歌声のパワフルさに驚きました。

本当に驚きですよね。僕も「ジャンプ」のお話をいただくより、もっとずっと前にライブを観させてもらっていたんですけど、そのときからパワフルでアグレッシブで。擦り切れそうな感じというか。アイドルってキラキラしていて、可愛くて、虚像を広めていくようなイメージがあったんですけど、彼女たちに良い意味で裏切られた感じがしましたね。

―― 歌詞の<これは心臓のドラマだ>という強いフレーズも、彼女たちにすごく似合っていて。

すごいですよね、普通に考えたらアイドルに歌わせるわけにはいかない言葉ですもん(笑)。エビ中のみんなは、現場では可愛らしい女の子たちなんですけど、メンバーの脱退だったり、亡くなってしまったり、やっぱりストーリーを持っていて。宿命を背負いながら戦っているような感じがしたんですよね。だから「ジャンプ」は、そういう彼女たちのフィルターを通したからこそ、生まれた楽曲だと思います。

―― 2曲目「スノーマン」はクリスマスソングですが、ひゅーいさんは意外と冬の歌自体が少ないですよね。

そうなんですよ。それで「クリスマスソング書いてみたい!」っていうところから始まりました。比較的すぐにできた曲ですね。どちらかというと得意な作詞方法というか。やっぱり喜びとか幸せとか感謝を描くよりも、何かを失くした心情を書くのが得意で。僕は未練がましい男なんですよ(笑)。だから主人公の<僕>もそういうタイプが多いですね。

―― では、<君>の描き方はいかがですか?

うーん…どちらかというと<君>についてのほうが、曲によっていろいろ考えるし、気にしますね。たとえば僕が<最低だ>って歌詞にしたら、その<君>は最低な人物になってしまうわけで。そこはちょっと腹をくくる感覚というか。ただ「スノーマン」の場合は、言葉が言葉を生む感じだったかな。最初に2番の<厚手のダウンジャケット 君がこぼしたシミがついている 何してもとれないんだ>というフレーズがあって。そこからどんどんストーリーと<君>の像を膨らましていきました。そして、そういうストーリーがあったら主人公の<僕>はどういう気持ちなのかをサビで歌う、という作り方をした曲ですね。

―― 4曲目「Oh My エンジェル!」はどのように生まれた楽曲なのでしょうか。

実はデビュー直後くらいからあった曲なんです。今回『ダイヤモンド』を作っていくなかで、最後の方はアルバムとしてのピースを埋めるような形で曲を作ったり、引っ張ってきたりしたんですね。そのときに「Oh My エンジェル!」は、今の僕では書けないような歌詞だなと思って。めちゃくちゃファンタジーというか、何も気にしてない感じというか、それが良いなと思って選んだんですよ。

―― サウンドも軽快でポップで、一見可愛らしい歌詞なんですけど、深読みしてみると<僕>はもうこの世にいないような気もしてきて…。

photo_01です。

そうそう、そう見えますよね。だからかつての僕、おもしろい歌詞を書くなぁと思って。最後の最後に<真夜中にハイウェイ飛び出して、星屑の中>ってフレーズがあるじゃないですか。これって心中するみたいなイメージなのかな?って、自分でも思ったり。ポップなのにどこか重さがあって良いなって。当時『ライ麦畑でつかまえて』とかすごく好きだったから、その影響もある気がします。

―― この曲には<401号室>というワードがありますが、1曲目の「ジャンプ」にも<201>が登場しますね。

よく部屋番が出るんですよね。大体、自分がそのとき住んでいる部屋番です(笑)。

―― ひゅーいさんはこれまでも歌詞のなかで、具体的な数字を描かれることが多いイメージがあります。たとえば「3329人」とか、<37.4度>(「母子手帳」)とか、<二万五千円>(「ピーナッツバター」)とか。

あー、たしかにそうかも。なんか…バランスなんですよね。カタカナだったり数字だったり。文字でワーッと見たときに、自分のなかに正解のバランスがあって。脳がそれに当てはめようとするんだと思うんですよ。ただ「Oh My エンジェル!」の歌詞を読んでいると、最近の僕の歌詞は地に足がついてきた感じもします。やっぱり菅田くんに楽曲提供をしたこととかも大きいですし。もちろん「Oh My エンジェル!」みたいな歌詞も、僕の良いところでもあるんですけど、そうじゃないこともできるようになりたくて変わってきたんだと思います。

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