いろんな<あなた>と出逢えたから、弱音も幸せも描き切った全12曲!

 2021年11月24日に“足立佳奈”が3枚目のオリジナルアルバム『あなたがいて』をリリースしました。配信シングルの他、wacciとの初コラボ楽曲「キミとなら」やキーボーディスト・渡辺シュンスケと制作した「2歳の記憶」など、全12曲を収録。コロナ禍があったからこそ、自分の過去と向き合い、出逢ってきたたくさんの<あなた>の存在に気づいた彼女。どんな本音も、どんな経験も、ちゃんと歌で伝えたいという今のモードをじっくりと語ってくださいました。是非、歌詞と併せてお楽しみください!
(取材・文 / 井出美緒)
This is a Love Story作詞・作曲:足立佳奈一度きりの人生で あなたと出会えて
本当によかったわって言える
この先もずっとあなたと二人で 見つめあって泣き笑いあって
まだ知らない物語の先へいこう
どんな敵もどんな不安も 私たちなら問題ないわ
あなたがいて今日も幸せよ
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昔の自分が聴いたら「何言ってんの!?」ってなると思います。

―― 前回のインタビューは2019年4月のシングル『little flower』のタイミングでしたが、あれから今に至る月日のなかで、佳奈さんは20歳になり、突然のコロナ禍もあり、とくに変化が大きかった2年半ですね。

とくにコロナ禍は、自分を見つめ直す時間が多くなり、かなり大きな転機になったと思います。しかも20歳になって、2020年にアルバム『I』をリリースしてすぐ、というタイミングとも重なったので。ツアーもできなかったりして、あのときは何をしていいかわかりませんでした。みなさんもお仕事や活動が止まってしまっていたはずなんですけど、自分と同じことを誰もが思っているとは思えずに、「私だけが止まっているんだろうな」って不安に感じてしまって。でも、自分の過去を振り返る機会ができたことは大きかったです。だからこそ今回のアルバムは、私が過去に出会ったいろんな<あなた>に向けて1曲1曲を作ることができました。

―― 2年半前のインタビューでは「何かや誰かを“心配してるよ”という歌をよく作っています」とおっしゃっていましたが、最近の曲作りのモードはいかがでしょうか。

もちろん誰かとの思い出も大事なんですけど、日常生活のなかで曲を作ることが多くなりましたね。たとえば虹を見て「あ、この虹、何かと似ている。なんだろう。あ、恋人かも」って、前の恋人を虹と重ね合わせて歌詞を書いてみたり。家族で動物園に行って、そのときに感じたことを書いてみたり。些細なことも歌詞にしたくなるのが今の私ですかね。

―― デビュー当時からそれこそ『little flower』ぐらいまでは、応援歌だったり、ピュアな告白ソングだったりの印象が強かったのですが、それが少しずつ変わってきた感じもありますね。

すごく変わりました。心配したり、応援したりするだけが、寄り添うことじゃないなって。悔しかったりもどかしかったりどうにもならなかったりして、でもそれをどうにかしたいわけじゃなく、「今、私はこの場所でそう思っているんだ」ってことが多々ありますよね。そういう日々のつぶやきを歌にするだけで、寄り添うことになるんじゃないかなって気づいたんです。そこから恋愛の描き方も変わっていきましたね。

photo_01です。

―― ピュアなラブソングから、「ノーメイク」や「朝になったら削除します」などの、いわゆる“沼恋”のようなディープなラブソングに踏み出すことには、結構勇気が必要な気がします。

友だちや自分の環境や実体験が全部リアルに反映されるので、なんか少し…恥ずかしい感じはありました(笑)。でもやっぱり歳を重ねたことで、恋の悩み方も「告白できなくて…」みたいなところから変わってきたんですよね。「もうダメだ、私は遊ばれている」って友だちもいたり。

―― 遊ばれていてもいいからそばにいたい、って気持ちも出てきたり。

アルバムの「まちぼうけ」という曲がまさにそうですね。歌詞の<2人にしか分からない理由で ずっと続けばいいのに>とか、リアルな気持ちだなって。多分10代のときはそんなこと思ったことないんですよ。昔の自分が聴いたら「何言ってんの!?」ってなると思います。恋愛ひとつでも、接するひとが増えれば増えるほど、歳を重ねれば重ねるほど、こんなに幅があるんだなというか。なんか「こういう歌を私、書くんだなぁ…」って自分でも変化にビックリしましたね。

―― 今作『あなたがいて』はラブソング以外でも、より歌詞にパーソナルな部分やリアルな感情が描かれていますね。

それを書くことに躊躇することがなくなりましたね。弱音だったり、家族のことだったり、もっともっと全部全部出し切ってしまいたいなって思います。なんか本当にいろんなひとと出会ったからこそ、今の自分があるということに気づくことができて。その気づきからこのアルバムを作ろうと思ったんですよね。

―― その気づきには何かきっかけがあったのでしょうか。

いつも一緒にいるスタッフのみんなが「二十歳のときより、アルバム『I』を作ったときより、モノの見方が変わっているよね」って言ってくれたんです。「たとえば“あの子がこう言っていて、私はこう思ったんです”とか、常に佳奈ちゃんの話には対象のひとがいて、最近はそれをより感じるよ」って。振り返ってみると、自分でもそうだなと思いました。それに気づいたとき、ツラい想い、嬉しい想い、いろんな経験すべてが、私になっていることをポジティブに捉えることができたんですよね。だから、悲しい歌も悔しかったときの歌も全部を大切にレコーディングすることができたんだなって思います。

―― 以前、歌詞に使わないようにしている言葉をお伺いしたとき、佳奈さんは「自分が使えない言葉ならある」とおっしゃっていました。たとえば<愛してる>などは「感情をまだ理解できないから使えない」と。今回のアルバムでは、ご自身で「こういう言葉も使えるようになったんだ」と感じるワードやフレーズはありますか?

どうだろうなぁ…。でも「私今あなたに恋をしています」なんかもそうなんですけど、今までラブソングを書くとき、自分が日常で話す“ですます調”を使うことはあったんですね。それが今回「This is a Love Story」では、日々使う言葉ではないけど、女性らしい表現ができたんじゃないかなって。たとえば<あなたがいて今日も幸せよ>とか<あなたがいて私がいるのよ>とか、語尾に<~よ>と使うことができるようになったんです。いかに可愛らしく歌えるか、とくに言葉遣いにこだわって作りましたね。

この曲は、もちろん自分の実体験や友だちの話も含まれているんですけど、私が好きなディズニーの作品たちを観て、プリンセスになりきっているところもあったり。経験だけではなく、そういう世界線でも歌詞を書けたというところは、自分のなかでの大きな変化だなと思いますね。

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