それは私のやりたいことじゃない!だったらゲーム作る!

―― ファンの方からは「SQUEEZE」や「化身」など、タイアップの関連用語を歌詞に取り入れる上手さを称賛する声もたくさん上がっていました。どのように歌詞を構成されているのでしょうか。

いつも最初にクライアントさんとミーティングをさせていただくんですけど、まず「キーワードありますか?」って訊きますね。そこで挙がったものはもうほどんど入れていきます。さらに「化身」の場合はゲームのタイアップなので、ゲームシステムとかストーリーとかキャラクターの性格とか操作方法とかの話をすごく聞いて、メモして、これはキーワードだなと思ったものを全部入れましたね。ゲームプレイしているひとが、ゲームを通じてこの曲を聴いたときに魅力的だと思えるような歌詞を書いた感じです。

―― キーワードからどんどん構築していって、全体が出来上がるんですね。

そうですね。あと、前作アルバムのリード曲「有頂天」を今回のリード曲「化身」にも入れちゃおう!と思って、サビに<I want you I love you I hate you>って同じフレーズを入れたり。「化身」と「みんなのうた」は、どちらも神風動画さんとご一緒した楽曲だから「トゲめくスピカ」の<痛いの痛いの>ってフレーズを「化身」にも入れてみたり。遊び満載で作った歌詞で。こういう仕掛けもよく作ります。なんか、どの歌詞にも言えることなんですけど、私は本当にアーティスト然とした話ができないんですよ。たとえば「私のこういう実体験が反映されています」とか「こういう想いで書きました」とか「普段こういうことを考えています」とか…ないんですよねー。

―― ただ、それはこだわりがないわけではなく、作詞の際のベクトルが自分の感情ではなくクライアントやリスナーに向いているだけなんですよね。

そう!歌詞の内容にこだわりがあるんじゃなくて、作り方にこだわりがあるというだけで。逆に、自分の思ったこと、感じたこと、体験したことを歌詞に書いてほしい、みたいなことを押しつけられたら、激怒して辞めます(笑)。うるせぇ!それは私のやりたいことじゃない!だったらゲーム作る!って。

―― よくTwitterでも「ついてくるひとだけついてきて」という意思を、定期的に発信されているのをお見掛けします。

いや本当に。すぐ“ロック警察”が来るんですよ。自分が思ったことを歌詞にしないなんてロックじゃないとか。とくに「テレキャスター・ストライプ」が人気だった当時はすごく湧いていて。こっちからしたら、それはお前の世界の基準だろ?何なの?どうしてほしいの?じゃあ自分でロックなアーティスト作ったら?みたいな。でももうポルカのスタイルは変わらないってわかったみたいで、最近はほとんど言われなくなりましたね。私は自信満々だから、私のやり方、私の音楽クリエイティブに、ついてきてくれるひとだけついてきてくれたら嬉しいし、それでもやっていけているので。今のスタイルは絶対に変えないですね。

―― 自信というところですと、今作のアルバムタイトルからも無限大の可能性を感じました。1st『全知全能』、2nd『有頂天』、そして3rdで『何者』とは、挑戦的でおもしろいですね。

photo_02です。

ね!ビッグマウスというか。まさに無限の可能性ってしっくりきます。これは結構前から決めていたタイトルなんですよね。音楽的なふり幅の大きさというところもあるし、ジャンルが限定されていない強みを表してもいるし、全14曲中10曲タイアップがついてたり、コラボしてたりって、このバンド何者なの?みたいな(笑)。聴き手のセリフをタイトルにしてみました。違和感とか驚きを込めた言葉ですね。

―― アルバムの入り口に「トゲめくスピカ」を持ってきたのは、どのような意図からでしょうか。

この曲は前作のミニアルバム『新世紀』のとき、3曲目に入れたんですよね。聴かせるタイプのただただ良い曲ができたから、後半に取っておきたくて。でも今回は『何者』というアルバムタイトルだからこそ、曲順にも良い意味での違和感や驚きがあるべきだなと思ったんです。だから、良い曲だから取っておきたいはずの「トゲめくスピカ」をあえて1曲目に持ってきました。この曲で始まったらおもしろいなと。曲順に関しては、どの並びでも次の曲が来たときにちょっとビックリしますね。とくに1曲目から2曲目「FICTION」の出だしを聴いたときは、自分でもめっちゃビックリする(笑)。

―― ちなみに、2曲目の「FICTION」はもともとタイアップがついていたんですよね。

そうなんですよー。歌詞もめっちゃ何回も「変えてください」って言われて、全部その通りに変えてから…なくなったんです(笑)。しかもMVではその商品をフィーチャーする予定だったから、それもすべて変えることになって、てんやわんやで。でもタイアップがなくなったとしてもすごく格好良い曲だから、予定通り2つめのリード曲として出すことにしました。企業名は言えないんですけど、まぁ速い乗り物系のタイアップで、ターゲットがちょっと年上めだったんですね。30代以上の男性。ポルカのファン層は男女比半々ぐらいだけど、10代20代のファンが多いから、新しいターゲットにチャレンジしたいと思ったんです。

最初はクライアントさんに「疾走感のある「女神」みたいな曲がほしい」って言われて。でも、速い乗り物のタイアップだからといって、速いBPMのロックで疾走感を表現するって全バンドにできることだし、20代ぐらいの子にしか刺さらないんですよ。だから疾走感とか衝動的、情熱的な部分は歌詞とグルーヴで表現することをコンセプトにこの曲を書いたんですよね。わりと強めな表現として<「つまらないのは世界か?お前自身か?」>というフレーズも使ってみたり。内側から湧き出てくるエモを、速いBPMではなく表現したので、この曲は歌詞がすごく大事ですね。

―― ジェットスターのタイアップ曲「JET」も、BPMの速さで飛行機の疾走感を表現するような曲ではないですね。

そうそう。「JET」も最初はそれこそ「トゲめくスピカ」みたいなポップロックがほしいって言われたのかな。でもやっぱり、飛行機のタイアップで爽やかポップロックを作るって、当たり前すぎてみんな曲が入ってこないんじゃないかなって。それで、この曲は“飛行機で旅をしたくなるような曲”がテーマだったから、旅をしたくなる、飛行機に乗りたくなる、その人間の衝動を本能レベルまで分解して、「今すぐ会いたいひとがいたら絶対に飛行機に乗るよね」と考えたんです。

―― 歌詞も、飛行機に乗っているシーンではなく、一人きりの部屋が舞台であるのが印象的です。

逆にね(笑)!だって、実際に飛行機に乗るより、小さい狭い自分のワンルームでイメージする飛行機のほうが絶対に存在感がでかいじゃないですか。タイアップとして違和感もあるし、フックになって格好良い。なのでMVも一人の部屋でダンスをするコンセプトにしたし、曲調もダンスファンクなんですよ。あと“旅に出よう”という歌詞にするより、ラブソングにしたほうが良いと思いますという話もしました。最初は「何言ってんだこいつ」みたいな感じだったんですけど(笑)、それをすごい説得して、最終的にOKが出てこの曲になって。すごく気に入っている1曲ですね。

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