ぼくたちの失敗森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 春のこもれ陽の中で 君のやさしさに うもれていたぼくは 弱虫だったんだヨネ 君と話し疲れて いつか 黙り こんだ ストーブ代わりの電熱器 赤く燃えていた 地下のジャズ喫茶 変れないぼくたちがいた 悪い夢のように 時がなぜてゆく ぼくがひとりになった 部屋にきみの好きな チャーリー・パーカー 見つけたヨ ぼくを忘れたカナ だめになったぼくを見て 君もびっくりしただろう あの子はまだ元気かい 昔の話だネ 春のこもれ陽の中で 君のやさしさに うもれていたぼくは 弱虫だったんだヨネ |
蒼き夜は森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 春は まぼろし ふたりは 悲しい夢の中 君と いっそこのまま だめになって しまおうか もどろうか もどろうか それとも もう少し このまま 君と眠ろうか 春は まぼろし やさしいばかりの今夜の気持 君は ぼくのひざまくら 眠れそうかい 眠れそうかい 眠れそうかい それとも このまま 君と死んでしまおうか 春は まぼろし 淋しいだけの ふたりなら 何にも 云わずに せめて 君と軽やかに 踊ろうヨ 踊ろうヨ それとも このまま 君と落ちてしまおうか 君と落ちてしまおうか |
雨のクロール森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 夏の川辺に 二人は今日別れる ぼくは黙って 草笛吹いた ウフフフ~ ウフフフ~ 君は花がらのワンピースおいて 静かに涙色のまぶしい水の中 ウフフフ~ ウフフフ~ 雨に君の泳ぐクロールとってもきれいネ 雨に君の泳ぐクロールとってもきれいネ 夏がめぐりめぐっても ぽくはもう決して 泳がないだろう |
蒸留反応森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 長いマフラー ふたりで 巻いた 君のかじかんだ 小さな手 ポケットの中で 冷たくて いい気持 雪よ降れ んーん 雪よ降れ んーん 去年の夏の 君の Tシャツみたい 白一色おおわれて どこまでも ぼくは 目を細めて まぶしいヨ いい気持 雪よ降れ んーん 雪よ降れ んーん 白い向うへ もっと白く 君のまつ毛に 雪が降って重たそう ぼくの 口唇で とかしてあげよう いい気持 雪よ降れ んーん 雪よ降れ んーん ふたりの足跡 雪が消してゆく ぼくが冷たくて きみがつめたくて ふたりの歯が カタカタ鳴って おかしいネ いい気持 雪よ降れ んーん 雪よ降れ んーん ぼくときみは 雪にうもれて もう見えないヨ 白一色世界 ああきれいだネ きれいだネ いい気持 雪よ降れ んーん 雪よ降れ んーん |
哀悼夜曲森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 目覚めては なつかしい 美しき日々よ 目をふせて 悲しい 美しき日々よ 歌っても 帰らぬ 若き日々よ 深き眠りのうちに 時よ 終れ |
孤立無援の唄森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | ネェ何か おもしろいことないかなァ 貸本屋の のき下で雨やどリ 君は むずかしい顔して 立読みしながら 本を盗んだ ぼくの 自転車の うしろで 孤立無援の思想を読んだ 春になったら 就職するかなァ 壁に向って 逆立して 笑った 机の上の 高橋和己は おこった顔して さかさに見える どうして 生きていいのか わからぬ ふたりが 畳の上に ねそべっている ネェ何か アルバイトないかなァ 君はモノクロ テレビのプロレス見てる ふたりはいつも 負け役みたい でんぐリ返って 地獄がためだネ 窓ガラス あけると 無難にやれと 世の中が 顔をしかめてる ネェどうにか やってゆけるかなァ タッグマッチの 君が いないから ぼくは 空を飛べない 年老いた スーパーマンみたい どうして 生きていいのか 解らぬぼくが 畳の上に ねそべっている 「語り」 葉書き ありかどう 君といた時間が 長過ぎだのかもしれません ぼくは もう少し こうしていたい気持です 新しい背広を着た 真面目な君を見るのは 少し恐い気もしてます でも 近いうちに 君に逢いたいと思います |
さよならぼくのともだち森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 長い髪をかきあげて ひげをはやしたやさしい君は ひとりぼっちで ひとごみを 歩いていたネ さよなら ぼくの ともだち 夏休みのキャンパス通り コーヒーショップのウィンドウの向う 君はやさしい まなざしで ぼくを呼んでいたネ さよなら ぼくの ともだち 息がつまる夏の部屋で 窓もドアも閉めきって 君は汗をかいて ねむっていたネ さよなら ぼくの ともだち 行ったこともないメキシコの話を 君はクスリが回ってくると いつもぼくに くり返し話してくれたネ さよなら ぼくの ともだち 仲間がパクられた日曜の朝 雨の中をゆがんで走る やさしい君は それから 変ってしまったネ さよなら ぼくの ともだち ひげをはやした無口な君が 帰ってこなくなった部屋に 君のハブラシとコートが 残っているヨ さよなら ぼくの ともだち 弱虫でやさしい静かな君を ぼくはとっても好きだった 君はぼくのいいともだちだった さよなら ぼくの ともだち さよなら ぼくの ともだち |
逆光線森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 淋しい ぼくの部屋に 静かに 夏が来る 汗を流して ぼくは 青い空を 見る 夏は淋しい 白いランニングシャツ 安全カミソリがやさしく ぼくの手首を走る 静かに ぼくの命は ふきだして 真夏の淋しい 蒼さの中で ぼくはひとり 真夏の淋しい 蒼さの中で ぼくはひとり やさしく発狂する ウーン ウーン ウーン ウーン ウーン ウーン |
サナトリウム森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 漱石の本 投げだして くちづけした 窓辺の 水の花 あざやかに ふるえて あなたの ワンピース 白地に花が 浮きだして とっても 淡くて きれいネ ソーダ水ふたりで 飲んで とっても涼しいネ あなたは チェリーを ほおばって 別れは いつも つらい夢 今宵は もう 遅いから あなたの 横顔 悲しそう 「語り」 結核前夜のように ぽくは よく同じ夢を見ます それで ぼくは汗ばみっぱなし だから ぼくの左の肺の中は 水でいっぱいです もうすぐ ぼくの左の肺の中に 真赤な花が咲くはずです |
男のくせに泣いてくれた森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 夢のように はかなく 私の記憶は 広告写真みたいに 悲しく通りすぎてゆく 淋しかった 私の話を聞いて 男のくせに 泣いてくれた 君と涙が 乾くまで 肩抱きあって眠(ね)た やさしい時の流れはつかのまに いつか 淋しい 季節の風を ほほに 知っていた 君と涙が 乾くまで 肩抱きあって眠(ね)た やさしい時の流れはつかのまに いつか 淋しい 季節の風を ほほに 知っていた |
春爛漫森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 桜の花びら 踏んで 歩いた 君と肩くんで 熱くこみあげた 春よ 春に 春は 春の 春は遠く 春よ 春に 春は 春の 春は遠く 悲しみは 水色にとけて 青い空の 青さの中へ 青く 青き 青の 青い 青さの中へ 青く 青き 青の 青い 青さの中へ 哀しい夢 花吹雪 水の流れ ンーン ンーン 春爛漫 |
G線上にひとり森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 夏草の上に ねそべって まぶしい孤独な 夢がひろがる ひとり目ざめて あくびして 涙ふいた 夏の空は ヒコーキ雲 何にもいわない 六月の空は ぼくの好きな みずいろです 暗闇よ ぼくを呼べ 遠い記憶へ あなたの ところへ ぼくをつれてって やさしい風は ぼくをなでて ひとりは とても いい気持 夏草の上に ねそべって いま ぼくは 死にたいと思う |
ラスト・ワルツ森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 美しき明日に ついても語れず ただあなたと しばし この時よ すべてが なつかしき この時よ すべてが終る この夜に せめて 最後に ラスト・ワルツ この暗き部屋の 窓から 街の灯は まばゆく 自由が 見える すべてが 遠き この時よ このまま 若い日が 終るのなら せめて 最後に ラスト・ワルツ 美しき明日に ついても語れず ただ あなたと un deux trois すべてが帰らぬ un deux trois すべてが 終る un deux trois せめて 最後に ラスト・ワルツ |