言葉の達人

SAKUSHIKA

 達人たちは1曲の詞を書くために、言葉を巧みに操り、その時代を象徴する言葉を探した。その言葉は多くの老若男女の心を掴んで離さず、その歌は大ヒットした。
「孤独がつらく感じるとき」「愛することがよくわからなくなったとき」いつも、勇気と力を与えてくれた…、作詞家は言葉の魔術師である。そんなプロの「作詞家」の皆さんをゲストにお招きしてご紹介していくこのコーナー。
今回は、HIM、Sinといったユニットでヴォーカルとして活躍され、現在はw-inds.、谷村奈南などの最新J-POPで数多くの作品を手がけている「shungo.」さんをゲストにお迎え致しました。

shungo.

代表作

「Because of you」
「SUPER LOVER〜I need you tonight〜」
「LONG ROAD」
「十六夜の月」
「IT'S IN THE STARS」
「TRIAL」
「ハナムケ」
「LOVE IS THE GREATEST THING」
「Beautiful Life」
「CAN'T GET BACK」
「Rain Is Fallin'/HYBRID DREAM」/ w-inds.
「over...」/K
「真昼の月」/島谷ひとみ
「AS TIME GOES BY」/島袋寛子(hiro)
「S.P.D.」/SPEED
「Say Good-bye」
「JUNGLE DANCE」
「SEXY SENORITA」
「Crazy For You」/谷村奈南
「Reason」
「Result」/玉置成実
「moonlight」/MAX
 その他多数。

作詞論

たかが歌の詞、されど歌の詞。
10年以上やってきて、歌の歌詞が楽器の役割を果たすことを知り、日本語の美しさや繊細さを知り、コトバの言い回しが無限であることを知りました。
でも自分の“書き方”みたいなものは、やっと薄ぼんやりとわかってきた程度です。“書き方”というよりは“自分をソノ気にさせる持っていき方”でしょうか。相変わらずそれが“迫った締め切り”だったりしますが。
締め切りといった時間的なものをはじめ、プロには制限が付きもの。イメージ、方向性、タイアップ…でもその制限なくしては到底出来上がらなかった作品があることも確か。考え方一つですが、それが“幅”になっていったような気がします。
歌い手時代、音楽制作の行程上、一番苦悩し嫌だったのが“作詞”という作業でした。その当時のプロデューサーに「“詩(ポエム)”にするな。コトバを司れ。それが歌の“詞”だ。」と言われたことが強烈に印象に残っており、今でもそれが作詞の指針となっています。主人公が自分の中でリアルに息づけば息づくほど、例え詞中で多くを語らなくても、その詞に一貫性が生じることを痛感しだしてから、その主人公の生い立ち・いでたちをはじめ、今住んでいる場所や部屋の間取り、果ては好きな色や今朝食べたものまで即答できるようになりました。…もしかしたら何かの症例かも知れませんが、そうなってからやっと書くことが楽しくなったような気がします。
“歌い手を目指していた自分が、なぜ人様の歌う詞を書かなくてはいけないんだろう”と葛藤していた時期もありましたが、歌い手の感性で楽曲をトータル的に捉え、そこにそのアーティストのまだ未知数な部分を開拓するべく“ならでは”の詞を乗っけて行こうと、今は何だか張り切っています。
わかりやすく言うと、「歌うように書きたい」のだと思います。

shungo.さんに伺いました。
Q:
作詞家になったきっかけは?
A:
きっかけはありません。成り行き上「気が付けば…」という感じでしょうか。
最初は音楽制作の行程の一つに“作詞”があったので、それだけを専業とする時が訪れるなどとは夢にも思っていませんでした。
なので、今も“作詞家”という肩書には、どこか借り物のような違和感を感じます。
Q:
プロ、初作品について
A:
「NOW AND FOREVER」/HIM (1996年)
歌い手としてデビューしたユニット“HIM(エイチ・アイ・エム)”のアルバム収録曲で、自分が歌ったソロ楽曲2曲の内の1曲でした。
Q:
作品を提供したいアーティスト
A:
安室奈美恵、川村ゆみ、小林幸子、中嶋静香(HIM)、松田聖子、MICHICO、山本リンダ
Q:
あまり売れなかったが、私の好きなこの歌
A:
「Mind Air Line」/Sin (2000年)
歌い手として再デビューしたR&Bユニット“Sin(シン)”のデビュー・シングルのカップリング曲です。この曲の作詞で「(今までの領域から)一歩抜けた…!!」と、なぜか確信を持ちました。
Q:
なぜ「詩を書くことを選んだか」
A:
思い返せば昔から、特に80年代歌謡曲の歌詞が好きで、松本隆先生や康珍化先生が産み出される短編映画のような“映像が浮かんでくる”歌詞によく感服していました。
授業中、曲もないのにストックのつもりで書いた詞も100作以上…英会話の外国人教師に見つかり、すべて没収されましたが。
プロとしての初作品を採用してくださったプロデューサーの「おまえには詞の才能がある。」の一言でまずその気になり、後は、実際音楽業界に身を置いてからの様々な出逢いによる影響が大きいです。
でも最大の理由は「依頼が来るから」でしょうか…身も蓋もありませんが。
Q:
プロの作詞家になりたい人へのアドバイスを
A:
できれば逆にアドバイスして頂きたいくらいなのですが…取り立てて言わせて頂けば「どんな批評も受け容れる」ことでしょうか。
これは詞に限ったことではありませんが、作品が一度世に出てしまえば、例え自分が書いたものであっても、判断や受け取り方はアーティストやリスナーに委ねるしかありません。
時には人格を全否定されるくらいにけちょんけちょんに酷評されることも。人間関係と一緒で、詞も“相性”です。そこに“合う合わない・好き嫌い”が生じることは致し方のないこと。感情を揺さぶる分、無関心よりは、まだ嫌われた方がいいとは思いますが。
万人に支持される作品を創り上げることは不可能です。批評に左右され“自分らしさ”を失うことが一番怖いこと。僕は感情の振り幅がハイジのブランコ並みに大きいので、批評によって無意識にでもブレが生じることを避けるため、自分の詞が論議されている可能性のある“場”にはまったく足を踏み入れません!
最後に。“たった一言”がドえらいものに化ける可能性があります。気になった言葉や思いついた言葉はいちいちメモすることをおススメします。人って案外すぐに色々忘れるものですよ…!ちなみに僕は携帯のテキストメモをフル活用しているので、携帯を紛失して仮にそれを誰かに見られた日には死にたいくらい恥ずかしいと思います。
歌詞を見る TOKYO w-inds.

自分で詞を書いたのに、完成した曲の↓のフレーズにさしかかると堪え切れず突然泣き出したりしていたので、よく周囲を震撼させていました。「ある意味幸せだよね。」とか「地方から出てきたわけじゃないのに入り込んでるよね〜。」などと身内から色々揶揄されたりもしましたが、この曲の主人公は僕にとってとても思い入れのあるキャラクターの一人なのです。
彼がどこ出身で、今何の仕事をしていて、どこのショップのウインドーを覗き込んでいるのか等すべて書き出したい衝動に駆られましたが、それは作家として無粋な行為なので割愛させて頂きます。…気付いてよかった。
この曲が完成した時、普段用がないと絶対に電話をして来ないメーカーのスタッフさんから電話があり、この詞についての感想を熱弁され、ちょっと引くと同時に何だか嬉しかったことを憶えています。

■私の好きなあのフレーズ
「夢一つ、今日諦めたよ。
でもまだだ。此処からも星だって見えるんだ」

PROFILE

shungo.(シュンゴ)
別筆記名:HIMK

東京都生まれ。

1995/03
Sony Music Entertainment SD制作部主催ヴォーカル・オーディション“歌いに来ませんか?”合格。以後SDにて育成。
1995/08
SD主催“SHOWCASE”出場。同年4月にSony Recordsよりデビューしていた伊秩弘将のユニットHIMに男性Vo.として3rd シングル「AQUARIUS」から正式加入。
1996/09
SD Music Networkと専属・マネージメント契約。
1997/12
HIM解散。(シングル8枚・アルバム2枚を発表。)以後SDにてデモ制作。
1998/10
avex group主催 男性ヴォーカル・オーディション“a-boy”最終選考通過。以後Prime Directionにてデモ制作。
2000/08
Universal Musicより、男性R&BユニットSinのVo.として再デビュー。(アナログ1枚を含むシングル3枚、アルバム1枚を発表。)作家活動開始。
2002/12
w-inds.「Because of you」(作詞)で第44回日本レコード大賞金賞受賞。
2003/12
w-inds.「Long Road」(作詞)で第45回日本レコード大賞金賞受賞。
2005/05
学研/隔週TV情報誌「TV LIFE」にて、コラム【shungo.のall about HIM】連載開始。('05.05〜'06.03)
2005/12
w-inds.「十六夜の月」(作詞)で第47回日本レコード大賞金賞受賞。
2006/12
初ソロ名義(shungo.)で、日本テレビ系列アニメ「Angel Heart」のサントラに参加。(挿入歌として、第42話でオン・エア)
2007/12
w-inds.「LOVE IS THE GREATEST THING」(作詞)で第49回日本レコード大賞金賞受賞。
2008/12
谷村奈南「JUNGLE DANCE」(作詞)で第50回日本レコード大賞優秀作品賞受賞。

[CDリリース情報]

谷村奈南
「every-body」

AVCD-16184/B / AVCD-16185
CD+DVD ¥1,800(tax in)
CD Only ¥1,050(tax in)
2009.07.08 Release
M2:「GIRLS WANNA BE」
M3:「Mind Ya Biz」

w-inds.
「Rain Is Fallin'/HYBRID DREAM」

PCCA-2927 / PCCA-2928 / PCCA-2929
CD+DVD ¥1,575(tax in)
CD Only ¥1,260(tax in)
2009.05.13 Release
収録曲全曲

SPEED
「S.P.D.」

AVCD-16180/B / AVCD-16181
CD+DVD ¥1,800(tax in)
CD Only ¥1,050(tax in)
2009.05.27 Release
収録曲全曲

谷村奈南
「Crazy For You」

AVCD-16172/B / AVCD-16173
CD+DVD ¥1,800(tax in)
CD Only ¥1,050(tax in)
2009.02.18 Release
収録曲全曲

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