言葉の達人

SAKUSHIKA

 達人たちは1曲の詞を書くために、言葉を巧みに操り、その時代を象徴する言葉を探した。その言葉は多くの老若男女の心を掴んで離さず、その歌は大ヒットした。
「孤独がつらく感じるとき」、「愛することがよくわからなくなったとき」いつも、勇気と力を与えてくれた…、作詞家は言葉の魔術師である。そんなプロの「作詞家」の皆さんをゲストにお招きして、毎月、紹介していくこのコーナー。
今回は、常に「日常」に焦点を当て、普段何気なく使われている言葉や見慣れた風景から人間の心理やドラマを巧みに表現し、これまでに2000曲を越える作品を世に送り出している「松本一起」さんをゲストにお迎え致しました。

松本一起

代表作

ガラス越しに消えた夏」/鈴木雅之
夏の日の1993」/class
ジプシー・クイーン」「Fin」/中森明菜
夢の彼方」/矢沢永吉
INNOCENT SKY」/吉川晃司
モノクローム・ヴィーナス」/池田聡
など 多数

作詞論

作詞家の仕事は日々、街を歩くことで、それが仕事。
パソコンの前に坐ったら、それは作業の始まりである。
リアリティな感情と美しい言葉と、そして普段見慣れた景色であるけれど、
その風景には憧憬がなくてはならない

松本さんに伺いました。
Q:
作詞家になったきっかけは?
A:
テイチクレコードのディレクターとの出逢い。
処女作がシングルに採用され、その後多くの人から依頼があった。
Q:
プロ、初作品について
A:
「初めての風景」平沢典子・・栃木県団体のイメージソング
この作品については今でも自分自身への評価は高い。
Q:
作品を提供したいアーティスト
A:
特になし
Q:
あまり売れなかったが、私の好きなこの歌
A:
「夏を忘れたシー・サイド」ZIGZAG
Q:
なぜ「詩を書くことを選んだか」
A:
ヒットする曲が一曲増えるたび、この仕事やって良かった、と思うようになった。
音楽で夢や理想や挫折や切なさ等を伝えるということで
普段使っている日本語でそれを担うことに誇りを感じられる。
Q:
プロの作詞家になりたい人へのアドバイスを
A:
日常の痛みとか苦しさを正面から受けてその感覚をしっかり覚えて欲しい。
何からも逃げることなく、自分にしか出来ない方法で感じて欲しい。
歌詞を見る 夏の日の 1993 class

classのデビュー曲であり、今では夏の定番ソングにまで成長した。
詞は単純であるけれど、実は内容としては人間の奥深い心理を語ったつもりである。
普段気づかなかったことや、当たり前と思っていることの非日常性など、分かりやすい言葉で書いた。

■私の好きなあのフレーズ
「普通の女と思っていたけど」

PROFILE

松本一起(まつもと いっき)作詞家

慶応大学・文学部出身、獅子座、O型。
コピーライターを経て、1979年栃木団体のイメージソングで作詞家デビュー。
鈴木雅之「ガラス越しに消えた夏」、池田聡「モノクローム・ヴィーナス」、
中森明菜「ジプシークイーン」、class「夏の日の1993」など、数々のヒット曲を手掛ける。
他には、ラジオのパーソナリティ、エッセイの執筆、新人プロデュース、日本の芸術家との対談など、音楽・文化活動に幅広く活躍中である。

著書は、「40%理解しあえたら結婚しよう」(PHP)、「ロードサイドブルー」(メディアファクトリー)、「さよならしか見えない時にも」(大和書房)、「恋愛セラピー」(ロングセラーズ社)など多数あり。

近況報告

・大和女組がデビュー 「浮世つれづれ女舞」2006年末
・婀修羅がデビュー 「illusion」2006年末
・あるテーマの元に100曲の作詞に取りかかっている。

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