どんなに世界中の人が「クソだ!」って言っても…。

―― アルバム『コレでしょ』のなかで、とくにコレサワさんが思い入れの強い主人公を挙げるとしたらどの曲の子でしょうか。

一番のお気に入りは「夜にして」かなぁ。これは“本当はこんな気持ちを見せたくなかったけど…見せちゃう!”って気持ちで書いたので(笑)、お気に入りですね。あとラストの「最後の有給」は、コレサワというより、本名の素の私が書いたような曲なので、大事にしています。このアルバムの中で最初に入れると決めた曲でもあります。

―― お気に入りの「夜にして」は、男性スタッフさんから「怖い曲」だと言われたそうですね。

多分、自分が優しくしてあげたり、隣でただ笑っているだけじゃダメで、女の子に泣き顔が見たいとか傷つけたいって思われているところが怖いんだと思います。でもそれは違って、もっと<君>に人間っぽくなってほしいのに、彼が気を遣っているというか、殻を破ってないところが不安なんですよね、この<あたし>は。だからもっと曝け出してほしいって気持ちを<何度も 恋しちゃう 夜にしてよ>ってフレーズで表したんです。そして、世の男性は女の子にちゃんと素敵な夜をあげているのかな?…という、私の疑問を投じている曲でもあります(笑)。

―― 「最後の有給」は<あたしの遠回りしたこの夢を 正しいとキレイと言って>というフレーズがすごく素敵で、刺さりました。

嬉しい~!私もそのフレーズが好きなんです。やっぱりね、シンデレラストーリーみたいに上手くいく人って一握りで、大体の人は遠回りをしていると思います。私も上京してもう8年目になるし、25歳でデビューしたのも遅い方だし。でも、そうやって夢を追い続けている人たちが、途中で心折れそうになったときに「いや、あなたの遠回りは正しいし、ちゃんとキレイだよ」って伝えたいし、私自身もそう言ってもらいたいので、この歌は自分の背中も、同じように夢を追う人の背中も、押す1曲になってほしいですね。遠回りしたからこその正しさってあると思うし、正しいと思いたい。

―― コレサワさんの曲には<君>というワードがよく登場しますが、このアルバムだと「彼氏はいません今夜だけ」「パープル」「最後の有給」の3曲だけは相手を<あなた>と呼んでいますね。二人称はどのように使い分けているのでしょうか。

<君>は、同じ歳でタメ口も使えるような距離感の近い相手ですね。だから<あたし>のワガママ度も強いと思います。でも<あなた>に対してはちょっと憧れや敬意がある。自分より大人だったりとか、自分が一歩下がっていたりとか、見守ってもらっているような温かさがあったりとか。想いをタメ口では軽々しく伝えられないようなとき、何かひとつクッションを入れたくて<あなた>というワードを使っている気がします。

―― 恋愛のどの局面を切り取るかで言うと、わりと“付き合っているとき”の言いたいのに言えない気持ちを描くことが多いですか?

どうだろう…。あ、でも「彼氏はいません今夜だけ」も付き合っている。「夜にして」も「悪いユメ」も「プラネタリウムに憧れた」も「君とぬいぐるみ」もみんな付き合っている!今言われてハッとしました。だけど、曲が降りてくる時期は、私自身が付き合う前とかまだ付き合い始めの浮かれているときが多いんです(笑)。だって付き合っちゃうともう、グダグダかズタズタかどっちかの日々が続くだけだから。ちょっと酔っているような幸せな気分の方が歌詞は書きやすいので、なんか…不思議ですねぇ。

―― 歌詞を書くときにあまり使わないように意識している言葉はありますか?

たとえば、失恋ソングを書くときに『失恋』とは言いたくない。会いたくても『会いたい』とは言いたくない。あまり単純な言葉で表したくないなと思います。それを簡単に言っちゃうと、聞き流されちゃいそうなので。なるべく自分らしい言い回しで、みんなが知っている感情を探すことはいつも挑戦しています。だから「彼氏はいません今夜だけ」も『浮気』というワードは使っていなくて<あなたと間違えたい>と歌っているんです。いろんなフレーズでドキドキしてもらいたいですね。

―― 逆によく使う言葉というと?

photo_01です。

<ちょっと>とか<ギュって>とか、ちっちゃい<っ>が入る言葉ですね!今回のアルバムの歌詞にもたくさんあると思います。<きっと>とか<やっと>とか<なっちゃう>とか。あと【ちゃちゅちょ】とか【きゃきゅきょ】とかも入れたい(笑)。そういう言葉が可愛くて好きなんです。だって「こぼれちゃった」とか日常会話で言うとブリッ子じゃないですか。でも歌の中だったら「~だもん!」とかも許されるから、いつも自分が使いたくて使えない言葉を使っています。

―― 映画や本からもいろんなインスピレーションを受けているかと思いますが、とくに心に残っている言葉を教えてください。

どこで知ったかは忘れてしまったんですけど【近くで見たら悲劇でも、遠くから見たら喜劇だ】って言葉ですね。どんなにつらいことや恥ずかしいことも、遠くから見たらエンターテインメントになるんだなって、ハッとさせられました。「彼氏はいません今夜だけ」も、自分が当事者になったらめちゃくちゃ嫌だけど、遠くから見たら面白かったりするじゃないですか。だから、どんなことも歌って良いんだなって気づいたし、これはコレサワの音楽を作っていく上で大事にしたいなって思っています。

―― 今、一番会いたい人は、コピーライターの尾形真理子さんだそうですね。お会いしたらどんなことを話したいですか?

どんなときにたった一行の名キャッチコピーが生まれるのかとか、めっちゃ気になります。私も歌詞を書くときに、なるべく一行や二行を引っこ抜かれても、ちゃんと伝わるようなフレーズを意識はしているんです。でもコピーライターの方は、最初から一行に全てのメッセージを込めなきゃいけないから、超ハードルが高いと思うんですよね。

―― 尾形さんが手がけている“LUMINE”の広告コピーも毎回素敵ですよね。

大好きです~。よくこんなに思いつくなぁって悔しいくらい。【会えない日もちゃんと可愛くてごめんなさい。】とか、会えないときも可愛くいたい女心を表しているなぁって思うし。あと【恋は奇跡。愛は意思。】とかもグッときました。たしかに恋は偶然だったりするけど、愛は「愛したい」って思わないと続かないから。それをたった一行で表すのがすごい。尾形さんがどんな恋愛をしているのか、日ごろどういうことを考えているのか、いろいろ気になります。本当に会いたい。

―― コレサワさんが歌詞を書くときに一番大切にしていることは何ですか?

自分が<あたし>を好きかどうか。どんなに世界中の人が「クソだ!」って言っても、私は誰よりこの歌詞の良さ、この女の子の良さをわかる完成度のものにするということはポリシーですね。私は好きな女の子のことしか書いてないので、たとえ「彼氏はいません今夜だけ」の<あたし>がどれだけ悪口を言われても、私はこの子の一番の味方です。だからこそ歌うときには<あたし>になりきることができるし、大事に歌えるんだって思いますね。

―― ありがとうございました!最後に歌ネットを見ている方にメッセージをお願いします。

歌詞だけ見ても楽しんでもらえるように、そして色んな解釈をしてほしいなと思いながら曲を作っています。ぜひ全曲チェックしてくださいっ。


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