LIVE REPORT

irienchy ライヴレポート

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【irienchy ライヴレポート】 『1st full album MISFIT リリース記念 one man live 〜ARE YOU CRAZY?〜』 2023年12月7日 at Shibuya eggman

2023年12月07日@Shibuya eggman

撮影:伊東実咲/取材:田山雄士

2023.12.13

“自分たちだけが楽しければいいと思って始めたこのバンドも、あなたと一緒に楽しめないと意味ないなって思うようになりました!”

宮原 颯(Vo&Gu)からそんな清々しい言葉も飛び出した、irienchyの1stフルアルバム『MISFIT』のリリース記念ワンマンライヴ。当日はまさに2020年1月の結成以降、コロナ禍などのさまざまな困難を乗り越えてきたこの約4年の活動を通して、バンドが逞しく変化を遂げたことが鮮やかに感じられた一夜になったのではないかと思う。

irienchyひさびさのワンマンでもある本公演を目撃しようと、Shibuya eggmanにはアルバムの発売を祝うたくさんの観客が詰めかけた。そのステージに諒孟(Gu&Cho)、井口裕馬(Ba&Cho)、本多響平(Dr&Cho)がまずは意気揚々と登場。イントロ的なセッションを展開し、そこに加わった宮原が“全員をハッピーにして帰ります!”と宣言、名刺代わりの「スーパーヒーロー」でライヴをスタートさせる。ワークシャツ調の衣装を纏ったこの4人が笑顔で歌と音を重ねれば、瞬く間にワクワクやドキドキ、キラキラが温かみをもって辺り一面に広がっていく。

のっけから“テンション上がりすぎて、ちょっと貧血みたいになってしまった(笑)”と、いったん水を飲む宮原。すぐさま調子を立て直し、“ここがどこか、俺たちが誰か、教えてください!”という呼びかけで“ここ誰ん家!?”→“イリエンチー!!”の声が大きく湧き起こった「ライライライ」につなぐと、明るいムードはさらに加速。本多が満面のスマイルでカウントを入れた「ずっと」では、メロディアスに躍動する井口のベースも力強さを増す。

“12月のこんな忙しい平日にirienchyのライヴに来てくれるなんて、きっとみんな変な人っちゃろうね(笑)。いやー、ありがとうございます! 今日は『ARE YOU CRAZY?』。変なままでここにいていいよっていう空間だから、どうぞ好きなように楽しんでいってください!!”

いつものように博多弁を交えつつ、SNSでの反応を受けて“今日ははじめましての人もいっぱい来てくれとうみたいでさ”と宮原は嬉しそうに話し、新規のお客さんに向けて“ギターの入江さん(諒孟の苗字)の家で組んだからirienchyです!”と、改めてバンド名の成り立ちをアピール。

そして、自分たちと同じくシャイな人が集まった会場の空気をもう一段階ほぐすため、“楽しむ準備はできてますかー?”のかけ声に“オフコース!”と返してほしいと提案し、見事にやりとりが決まって笑顔があふれる中、諒孟が作詞作曲を担当した「カレーなる休日」へ。アルバム『MISFIT』でピースフルな存在感を発揮しているこの曲は、ライヴにおいてもグッドスパイスとなり、宮原がハンドマイクでのびのびと歌う柔らかなメロディー、間奏のコーラス《Na Na Na Na... ナン》《るーるーるーるー... ルウ》に合わせてオーディエンスが幸せそうに手拍子する光景もたまらない。

『MISFIT』からの新曲はなおも続き、失恋の切なさを滲ませながらもさわやかな疾走感に満ちた「ne?」、当たり前の日々に隠れている思いやりを伝えるようなミディアムナンバー「今日も同じ」を、瑞々しく聴かせてくれる4人。フルアルバムの完成によってレパートリーが増え、これまでになかった類の深い抑揚が効いたライヴを作り上げられていたことは、本公演の特筆すべきポイントだった。

“eggmanのみなさん、元気ですか? みんな思いっきりクレイジーやってますかー?”と本多が切り出した次のMCタイムは、年末ということでこの一年で印象に残っている話を、メンバーそれぞれがしばし和やかに繰り広げる。持ち前のハートウォーミングな歌をゆったりと染み渡らせた夏&冬のラブソング「ヒトミシリ流星群」「キツネビヨリ」を経て、宮原が胸の内にある想いを赤裸々に語るシーンも。

この4人でバンドを始めるにあたって、自分たちの心がちゃんと笑えているか、好きなことを好きと、やりたいことをやりたいと言えているかを一番大切にしようと決めたという話。それを時に“綺麗事だ”“現実は違うよ”“楽しそうにワイワイやってれば?”と周囲から突き放された話。本音を押し殺してうまく生きていこうとしたら、何が好きか嫌いかも見失いかけてしまった過去の話。

そんなエピソードを明かしながら、“俺らの曲にシンパシーを感じてここに来てくれている人は、きっとあまり強くない人なはずやけん。でも、それは悪いことなんかじゃなくて。弱いからこそ人の痛みもわかるし、誰かにやさしくできるんやと思う。何かしらの選択に迷ってしまった時は、どっちの自分もちゃんと受け入れてあげてほしいです”と伝え、irienchy結成のきっかけになったデビュー曲「Message」を、これまでのバンドの歩みがうかがえるような迫真さで真摯に届けてみせる。

ライヴ後半は一転してノリノリにシフト。踊れるディスコサウンドで場内にワイパーが生まれ、宮原の切れ味鋭いラップも炸裂した「ミラクルダンサー」をはじめ、自分たちの弱さを踏まえた上で希望を粘り強く歌う真骨頂の「ソルジャー」、諒孟の燃え滾るギターソロなどメンバーのボルテージが上がりまくった「ドリームキラー」と、eggmanに集まった愛すべきハミ出し者をひとり残らず全肯定するように、ノンストップでアッパーチューンを解き放つ。

“しんどくなってしまった時、誰かと比べて自分を卑下してしまうような時、そばに置いておいてほしい、あなたにはあなたを好きでいてほしいという曲です。俺たちはそれぞれに人生があって、みんなが物語の主人公。自分が主人公だってことを、ひとりだけどひとりじゃないことを忘れないでください!”と宮原が前置きしてクライマックスで披露されたのは、もちろんアルバムのリード曲「最強のぼっち」。

自分を見失いかけた経験がある宮原だからこそ説得力を持つ、irienchy節全開のマイノリティー賛歌をフルスロットルで轟かせ、オーディエンスの盛り上がりもピークに。本編ラストは《涙の音が聞こえた時 抱きしめる事忘れないで》と歌われるやさしいフレーズが際立つ「メイビー」を、新たな門出を飾るように演奏してステージを降りた。

アンコールで再登場したメンバーは“今日は本当に楽しかった〜!”(宮原)、“楽しすぎてさ、「ヒトミシリ流星群」あたりで全身あちこちつっちゃったよ(笑)”(諒孟)と、各自が充実の表情を浮かべる。

その後もパワフルな「最強の矛」「バイバイ」の連打で悔いを残さないように全てを出しきり、新曲をたっぷりと組み込んだirienchyの記念すべき1stフルアルバム『MISFIT』のレコ発ワンマンは大盛況のうちに終了。“自分たちのやりたいことをちゃんとやっていくので、5年目もよろしくお願いします!”という宮原の言葉が頼もしかった。2024年はぜひ、アルバムのリリースツアーを開催してもらいたい。

撮影:伊東実咲/取材:田山雄士

irienchy

イリエンチー:2020年1月、元MOSHIMOの宮原 颯(Vo&Gu)と本多響平(Dr&Cho)が新たに結成。同年4月に1stミニアルバム『START』、23年12月に1stフルアルバム『MISFIT』リリース。恥ずかしいほど正直な心の声や日常に潜んだセンシティブな感覚を紡いだ詩と、どこかほっとするメロディー。ポップにまとまりながら攻撃的な一面のあるテクニカルな演奏など、4人それぞれの感性が絡み合い、先が読めない非凡な可能性と美学を秘めた4ピースバンド。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 2

    02.ライライライ

  2. 3

    03.ずっと

  3. 4

    04.カレーなる休日

  4. 5

    05.ne?

  5. 6

    06.今日も同じ

  6. 7

    07.ヒトミシリ流星群

  7. 10

    10.ミラクルダンサー

  8. 11

    11.ソルジャー

  9. 13

    13.最強のぼっち

  10. 15

    <ENCORE>

  11. 17

    02.バイバイ