LIVE REPORT

MYTH & ROID ライヴレポート

MYTH & ROID ライヴレポート

【MYTH & ROID ライヴレポート】 『MYTH & ROID One Man Live 2023 Autumn Tour “AZUL”』 2023年11月12日 at 渋谷 Spotify O-WEST

2023年11月12日@

撮影:大川晋児/取材:村上孝之

2023.11.27

最新ミニアルバム『AZUL』を10月25日にリリースすることに伴って、9月29日から11月12日にかけて同作を携えた全国ツアー『MYTH & ROID One Man Live 2023 Autumn Tour “AZUL”』へと旅立ったMYTH & ROID。昨年11月に約6年ぶりとなる国内ワンマンライヴを皮切りに、今年3月にその追加公演として行なわれた自身初となるワンマンツアーを行なってきた彼らが国内のライヴにも積極的に取り組んでいこうという強い気持ちになったことがうかがえる。

多くのリスナーがそれを待ち望んでいたことは明白で、春のツアーは大成功となった。また、最新作『AZUL』はMYTH & ROID初のコンセプトアルバムということで、“どんなライヴになるんだろう?”と期待を高めた人が多かったことは想像に難くない。今回のツアーも各地ともに盛況で、11月12日に渋谷Spotify O-WESTで開催されたファイナル公演はソールドアウトとなり、オーディエンスでびっしりと埋まった状態のライヴとなった。

Spotify O-WESTの場内は開演時から照明が落とされていて、水中をイメージさせるBGMが流れ、青いライトがゆったりと明滅を繰り返し、会場物販にて販売されていたLEDリストバンドが発する青い光がフロアーを染めるという空間となっていた。『AZUL』の世界観に合わせて開演前からオーディエンスを海底にいるような感覚にさせる辺りはさすがだと思っていると、突然ステージが眩い赤色光に包まれてネイティブ感を湛えたオープニングSEが鳴り響いた。客席から拍手と歓声が起こる中、ステージにTom-H@ck(Gu)とKIHOW(Vo)が姿を現し、ライヴは「theater D」で幕を開け、「ANGER/ANGER」に移る流れから始まった。

華やかなオーラを発しながら豊かな声量や幅広い声域、絶妙の抑揚などが光る歌声を聴かせるKIHOWとアクティブなステージングとシュアなギターワークを展開するTom-H@ck。強い存在感を放つふたりが並び立った情景と躍動感にあふれたサウンドにオーディエンスもアツいリアクションを見せ、ライヴが始まると同時に場内のボルテージは一気に高まった。

“ありがとうございます。『MYTH & ROID One Man Live 2023 Autumn Tour 「AZUL」』ファイナルへ、ようこそ。今夜は私たちと楽しんでください”というKIHOWの挨拶を挟んだあと、2ndブロックではさわやかかつメロディアスな「PANTA RHEI」やKIHOWの力強いヴォーカルとアッパーなサウンドに応えて客席から大合唱が湧き起こった「TIT FOR TAT」などをプレイ。この辺りの楽曲は音源以上に熱量が高く、かつ肉感的でライヴ映えの良さは抜群と言える。MYTH & ROIDを“洗練感を纏ったユニット”というイメージで捉えているリスナーも多い気がするが、ライヴを体感すると彼らがロックな心を持っていることがよく分かると思う。

その後はパワフルに疾走するサウンドとKIHOWのシリアスなヴォーカルを活かした「Paradisus-Paradoxum」やダンサブルな「STRAIGHT BET」などが届けられた。MYTH & ROIDの楽曲は“明るい”“暗い”といった単純な言葉では表せないことも特色だ。基盤は激しい曲でも透明感があったり、アッパーなダンスチューンなのにどこか翳りを帯びているなど、決して平坦ではない。一曲の中にさまざまな感情が込められることで生まれるグラデーションを纏った彼らの楽曲は本当に魅力的だし、それをライヴでもしっかり表現するのもさすがである。

“『AZUL』というアルバムを、10月25日に発売させていただきました。今回どういう作品を作ろうかと3人で話し合った時にすごく思ったことがあって、ここ10年とか15年というのは未来の人たちが“すごい時代だったね”と振り返るような日々だったと思うんですよ。そういう今の時代を生きている人たちでしか共有できない出来事を、空想の物語に置き換えて『AZUL』という作品で表現させていただきました。『AZUL』は海と島が舞台なんですね。僕は宮城県出身で、全てはもちろん語りませんが、いろんな想いをアルバムに込めさせていただきました”というTom-H@ckのMCに続けて、ライヴ中盤では『AZUL』のナンバーが続けて演奏された。

グルービーかつ退廃的な「RAISON D’ETRE」を皮切りに、ドリーミィーな雰囲気の「MOBIUS∞CRISIS」やヘヴィネスと美しさを融合させた「Tempest-tost」など、一曲ごとに表情を変えながら世界観を深めていく流れは実に魅力的で、楽曲の合間合間に『AZUL』の物語を伝える朗読を挿入する手法も功を奏して、強く惹き込まれずにいられなかった。

“救済感”を湛えつつ繊細な前半から力強い後半に移る「...And REMNANT」で感動的な余韻を残して『AZUL』のセクションを締め括ったあと、ライヴは後半へ。ここではTom-H@ckとサポート陣のソロ回しをフィーチャーした「VORACITY」やアップテンポの「L.L.L.」、猥雑さを纏ったダンステイストが気持ちを引き上げる「JINGO JUNGLE」などが演奏された。客席に煽りを入れながらステージを行き来して歌うKIHOWと笑顔を浮かべながらタッピングやトレモロピッキングなどを織り交ぜたテクニカル&エモーショナルなギターソロを決めまくるTom-H@ckのパフォーマンス、そして爽快感にあふれたサウンドにオーディエンスの熱気はどんどん高まっていった。

“今日がずっと続けばいいのにと思うくらい、すごく楽しかったです。ありがとうございます。これからもっと大きなステージにみなさんと一緒にいきたいと思っています。私が連れていきます”というKIHOWの言葉とともにラストソングとして「RESIST-IST」(新曲)を披露。ラウドでいながら惹き込み力も備えているというMYTH & ROIDならではのテイストの最新形にオーディエンスは怒涛のリアクションを見せ、場内はツアーファイナルに相応しい熱狂的な盛り上がりとなった。

『AZUL』の制作を経て、さらに魅力を増した姿を今回のツアーで遺憾なく見せつけたMYTH & ROID。KIHOWのヴォーカルを軸にした洋楽っぽさ(歌詞が英語といったことではなく、彼女は歌唱そのものに洋楽が香っている)と邦楽ならではの緻密なアレンジや捻りが効いていながらキャッチーなメロディー、多面性などを融合させた彼らの音楽がワールドワイドで評価されていることはよく分かる。そんなMYTH & ROIDが国内のライヴ展開にも目を向けるようになったことにはワクワクせずにいられない。今後の彼らがさらなるスケールアップを果たすことを強く予感させる上質なライヴだった。

撮影:大川晋児/取材:村上孝之

MYTH & ROID

ミスアンドロイド:インターナショナルで本格的なサウンド、鋭角的でキャッチーなメロディー、圧倒的なヴォーカルパフォーマンスを兼ね備えた日本のアーティスト。ユニット名の“MYTH & ROID”は過去を想起させる“Myth”(神話)と未来を想起させる“Android”を組み合わせた造語。2015年のメジャーデビュー以降、数々の大ヒットアニメの主題歌を手がけ、MV及び関連動画総再生回数は1億5千万回を超える。“感情の最果て”をテーマに、音楽、映像、ビジュアルなど、あらゆる側面から国籍や時代にとらわれない普遍的な人間の感情を描いて世界的な評価を得ており、これまでに20カ国以上でライヴ公演を行なっている。16年に発表した3rd シングル「STYX HELIX、4th シングル「Paradisus-Paradoxum」は2作続けてiTunes Store(JP)総合ランキング1位を記録。また、19年に発表した10th シングル「TIT FOR TAT」のMVは公開から約1年で500万回再生を超え、20年に発表した1st 配信アルバム『Future is Mine』では遂にサブスクリプションを解禁。同アルバムはノルウェーのiTunes Storeアニメトップアルバム1位を記録した他、ニュージーランド、マカオ、イギリス、イタリアなどの世界各国でTOP10にランクインを果たしている。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

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    13. ...And REMNANT

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    〜Band Instrumental〜