このコーナーでは、当時のランキングやエピソードと共に、「ザ・ベストテン」に出演した歌手のヒット曲を紹介していきます。第42回は1988年5月26日のランキングを紹介。
今月のスポットライトは、三代目スケバン刑事を演じてブレイクし、80年代後半を華やかに盛り上げた女性アイドルの一人・浅香唯の「C-Girl」を取り上げます。
夏らしさ全開!キュートな笑顔の魅力が弾ける代表曲
spot_photoです。

 浅香唯は宮崎県出身。1984年、小学館の「少女コミック」主催のオーディションで「浅香唯賞」を受賞。同誌掲載の漫画の主人公の名前を冠したもので、それがそのまま芸名になった。85年3月、中学卒業と同時に上京し芸能活動を開始。この年「つくば科学万博」会場から生放送していた情報番組「EXPOスクランブル」でアシスタントを務めた。6月に「夏少女」で歌手デビュー。その後シングルを出すもなかなかヒットせず、数多い女性アイドルの中で埋もれていた。

 しかし86年、10月スタートの「スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇」の主役に大抜擢され、一躍注目を浴びる。斉藤由貴、南野陽子が主演した人気ドラマシリーズの第3弾。しかし芸能活動を始めて以降、テレビを見る余裕もあまりなかった浅香はこのドラマを見たことがなく、自分が主演に決まって初めてスケバン刑事の人気を知ったという。それまで多くのドラマや映画のオーディションに挑戦しながらも落ち続けていた理由の一つが宮崎訛り。しかし、スケバン刑事のオーディションで初めて訛りが肯定的に受け止められ、宮崎出身の天真爛漫な少女というヒロイン設定に生かされたのだった。

 87年2月、同ドラマの最初の主題歌となった「STAR」で「ザ・ベストテン」に初ランクイン。この時は天井から吊り下げられた星型のブランコに乗って登場し、ステージ中央に降りてきて歌うという演出だった。しかし実は高所恐怖症で、その怖さと初出演の緊張感で、この時の記憶があまりないとか。出身地である宮崎県は放送局が少なく、限られたチャンネルの中で唯一楽しみに見ていた歌番組がザ・ベストテン。まさに憧れの番組だったのだから無理もないだろう。

 その後、「瞳にSTORM」「虹のDreamer」、さらに劇場版の主題歌になった「Believe Again」とヒット。共演した大西結花、中村由真と共に「風間三姉妹」として歌った「Remember」もヒットし、いずれもザ・ベストテンに出演した。

 「スケバン刑事」関連曲が一段落した後、10枚目のシングルとして発売したのが「C-Girl」である。本人がイメージガールとして出演した「カネボウ'88夏のプロモーション」CMソングに。化粧品のCMに出るのはまさにトップアイドルの証であった。健康的に日焼けした小麦色の肌が夏らしさを強調している。これはスケバン刑事の撮影終了後、ご褒美の休暇を兼ねて大西洋のバハマに長期滞在した際に、現地で撮影したもの。それまで真剣な顔で歌う曲が多かったのに対し、思い切り陽気で明るい曲にチェンジ。飛び跳ねるような元気な振り付けと弾けた笑顔で歌うのが、最初はかなり恥ずかしかったという。

 「C-Girl」の「C」の意味については、ヒットしている当時から話題に。建前上、歌詞にも出てくる「Candid」の「C」だと説明されることが多かった。実際は、CMの化粧品が「C」を冠した商品名であり(ビタミンC配合が特徴のファンデーション)、サビで「C」を連呼するタイアップソングとしての狙いと、爽やかな言葉の響きなどを考えて作られたというのが真相のようだ。

 ザ・ベストテンには第4位で初登場し、4週目でついに自身初の1位に。計11週ランクインするヒットになった。1位になった5月26日、スタジオには地元・宮崎から同級生たち9人と、小6の時の担任の先生がサプライズで登場。さらに浅香の母親も登場して、お祝いの花束を渡した。浅香はあまりの驚きで呆然としつつ、目を潤ませていた。

 その後もトップアイドルとして、多数のCM、ドラマ等で活躍しつつ、「セシル」「Melody」などをヒットさせ、ベストテンの番組終了までに計11曲をランクインさせた。中山美穂、南野陽子、工藤静香と共に『アイドル四天王』と呼ばれることも。浅香唯は、ザ・ベストテンの終盤約2年半を盛り上げた、最後のソロアイドルだったといえる。

ザ・ベストテン☆エピソード
 いつも緊張し、歌う時に表情が固くなりがちだったという浅香唯。ある時、少しでもリラックスさせようと、本人からしか見えないテレビカメラの先にぬいぐるみがぶら下がっており、番組スタッフの心遣いに感激したそうです。また、番組と強く結び付いている思い出が「カレー」。それは、TBS会館地下にあった、ケーキでも有名な喫茶店「トップス(Tops)」のカレー。ゆっくり外食する時間などなく、食事といえば冷めた弁当ばかりだった当時、ベストテン出演時にスタッフが買ってきてくれる温かいカレーは、多忙なアイドルにとってささやかなご馳走だったのです。
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