このコーナーでは、当時のランキングやエピソードと共に、「ザ・ベストテン」に出演した歌手のヒット曲を紹介していきます。第36回は1987年7月16日のランキングを紹介。
今月のスポットライトは、テクノサウンド、ダンスミュージック等、常に時代の最先端の音楽を取り入れながら様々な楽曲をヒットさせたTM NETWORKの代表曲、「Get Wild」を取り上げます。
スタジオに大量の機材を持ち込み演奏 コンピュータによる最先端サウンドの衝撃
spot_photoです。

 TM NETWORKは1983年5月、小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登の3人により結成された。小室がリーダーとして音楽性の方向を決め、サウンド作りを担当。音楽コンテストでグランプリに輝いた彼らは84年4月に「金曜日のライオン」、アルバム『RAINBOW RAINBOW』でデビューする。アルバムを制作する度に音楽性のコンセプトを模索し、音楽ファンからは高く評価されながらもなかなかヒットにはつながらなかった。

 そんな中、同じEPICソニーからデビューしていた渡辺美里に小室哲哉が曲を提供した「My Revolution」(86年1月発売)が大ヒット。スピード感ある譜割りのメロディー、大胆な転調など耳に残る作りで、小室にとって出世作となり、TM NETWORKの注目度も徐々に高くなっていく。

 作曲家として自信をつけた小室は、コンピュータサウンドに、当時まだ日本ではメジャーでなかったダンスミュージックやブラックミュージックの要素を取り入れて、TM NETWORKの音楽性をさらに進化させていった。87年発売のアルバム『Self Control」がランキング上位に入ったことで手応えをつかみ、さらなるヒットを意識して作られたのが「Get Wild」だった。

 「Get Wild」は、この年の4月から放送開始された、よみうりテレビ・日本テレビ系アニメ「シティーハンター」のエンディング曲に。週刊少年ジャンプ連載の人気漫画のアニメ化で、大都会・新宿を舞台にしたハードボイルドかつ親しみやすい物語と、この「Get Wild」の世界観はまさにピッタリだった。さらに、各話の本編ラストシーンが終わりきらないうちからイントロが流れ始め、途切れることなくそのままエンディングへ突入するという演出は画期的で、そのカッコよさが強く曲を印象づけた。

 ザ・ベストテンには1987年6月4日、スポットライトで初出演。司会の黒柳徹子は、3人の自己紹介もそこそこに、小室がスタジオに持ち込んだ、段状に何台も組まれたシンセサイザーやコンピュータの大掛かりな機材セットに興味津々。小室がリモコン操作で無人のピアノを自動演奏してみせたり、コンピュータのシーケンサーを走らせ「My Revolution」を演奏してみせたりするたびに、司会の黒柳徹子は目を見開いてビックリ。そんな近未来的な楽器編成の中、エモーショナルに「Get Wild」を歌う宇都宮隆のボーカルも視聴者を釘付けにした。その後同曲はランキングを上昇し、6月25日に第10位で初登場。最高6位を記録し、5週間ランクインした。

 「Get Wild」はTM NETWORK自身による多くのバージョンの他、他アーティストによるリミックスやカバーが多数存在する。2017年4月には、この曲の誕生30年を記念し、収録曲すべてが「Get Wild」というCD、『GET WILD SONG MAFIA』が発売された。レコード会社の枠を超えて音源が集められたもので、実に36バージョン。2018年3月には「トップ100にチャートインしたCDアルバムに収録された同じ曲のバージョン/リミックスの最多数」としてギネス世界記録に認定されている。

 TM NETWORKは、1990年に「TM NETWORKは、もうおしまいです。」という衝撃的な言葉で世間を騒がせつつ「TMN」に改名。そのTMNも94年に「終了」。メンバーはソロ活動を本格化させ、小室哲哉はプロデューサーとして数々のアーティストをヒットさせ、一時代を築いた。TM NETWORKは99年に再始動し、不定期ながらも活動を続け、2014~15年には30周年ツアーも行われた。

 しかし2018年、スキャンダル報道が発端となって小室哲哉が突如引退を表明。2019年はTM NETWORKのデビュー35周年にあたるが、動きがあるのかどうかは不透明なままだ。
 一方、「シティーハンター」の新作劇場版アニメが2019年春に公開されることが発表され、多くのファンが喜びに沸いた。その公式予告映像のBGMに使われているのは、やはり「Get Wild」。「シティーハンター」と深く結びつき、この曲も時代を超えて長く愛され続けているのである。

ザ・ベストテン☆エピソード
 TM NETWORKがスポットライトで番組に初出演した際、スタジオには「迷惑でしょうが…」でランクインしていたとんねるずがいました。トークの流れで、石橋貴明がバットを握ってソフトボールを打ち返し、スタッフがキャッチすることに。「くれぐれもあちらには打たないでください」と注意されていたにもかかわらず、石橋の打ったボールは、小室哲哉が持ち込んでいた高価な機材を直撃。予想外の展開に、さすがの石橋も焦ったようです。
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