このコーナーでは、当時のランキングやエピソードと共に、「ザ・ベストテン」に出演した歌手のヒット曲を紹介していきます。第20回は1978年2月2日のランキングを紹介。
今月のスポットライトは、1977〜78年に社会現象となるほどの大人気となった2人組アイドル、ピンク・レディー。子供から大人まで誰もが振り付けを真似して歌った「UFO」を取り上げます。
キャッチーな歌と振り付けで、大旋風を巻き起こした驚異の155万枚ヒット
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 1970年代後半、日本中に空前の大ブームを巻き起こしたアイドルが、ピンク・レディーである。静岡県出身の2人、根本美鶴代と増田啓子が中学で出会い、歌手を目指して意気投合。高校3年の時、数々の歌手を輩出したオーディション番組「スター誕生!」にチャレンジし、見事合格。甘いカクテルにちなんだ「ピンク・レディー」という名前が付けられ、1976年8月「ペッパー警部」でデビュー。この時ミーとケイ、18歳。2人ともスタイルがよく、スラリと伸びた脚には健康的なお色気があった。作曲家・都倉俊一と作詞家・阿久悠によるインパクトのある楽曲、さらに土居甫による全身を使った派手で大胆な振り付けはテレビの視聴者を釘付けにした。「ペッパー警部」は発売直後こそ目立たなかったが徐々に売上を伸ばし、続く2ndシングル「S・O・S」で初のオリコン1位を獲得。まさに破竹の勢いで人気を拡大していく。


 「ザ・ベストテン」が放送開始された1978年1月はまさにピンク・レディーの人気の絶頂期。「UFO」は記念すべき放送第一回の第1位に。ケイが大ファンだった俳優の田村正和がお祝いに駆けつけ花束を渡した。しかしこの時のことをケイは覚えていなかったという。この頃、一日の睡眠時間は合計しても平均3時間程度しかなく、殺人的なスケジュールをこなすのに必死だったのだから無理もない。「UFO」はベストテンでは11週ランクイン。155万枚を売り上げ、ピンク・レディー最大のヒット曲となった。彼女たちの曲は当時の世相を反映した内容のものが多いが、この曲も、発売当時の「UFO」「空飛ぶ円盤」ブームを取り入れている。

 ベストテン常連となったピンク・レディーが、特に世間の話題をさらったのは「透明人間」がランクインした時のこと。オーケストラをバックに歌う2人が、「消えますよ 消えますよ」と歌うと本当にスーッと消えてから再び現れ、視聴者の度肝を抜いたのである。これはあらかじめ同じカメラ位置からオーケストラだけの映像を撮影しておき、徐々にそれと差し替える形で2人を消したのだった。当時の技術で、しかも生放送で見事に2人を消してみせた担当スタッフはTBS内でも絶賛されたという。

 77年から78年にかけて、ピンク・レディーは「渚のシンドバッド」「ウォンテッド」「UFO」「サウスポー」「モンスター」の5作連続でミリオンセラーという驚異的な記録を達成。全国で小さな女の子たちがペアを組み、振りを真似して歌い踊った。レコードだけでなく、キャラクターグッズもさまざまなジャンルで発売され、その数は数百種類に及び、まさに社会現象になっていった。

 しかしどんなに熱狂的な人気も、永遠には続かない。1978年の年末に「サウスポー」で日本歌謡大賞を、「UFO」で日本レコード大賞を受賞したが、新曲の売上枚数は徐々に減っており、既に人気の絶頂を過ぎているのは明らかだった。1979年にはアメリカへ進出を図り、ラスベガスでの公演を成功させる。やがてビルボードへのランクイン、米国3大ネットワークの一つであるNBCでレギュラー番組開始など、一定の成果を出している。しかし海外進出は日本での活動がおろそかになることを意味し、ファンはますます離れていった。ザ・ベストテンにも、79年夏の「波乗りパイレーツ」を最後にランクインしなくなっていた。

 1981年3月31日、後楽園球場にてさよなら(解散)コンサートを開催。ピンク・レディーはまさにハリケーンのように日本を駆け抜け、4年7ヶ月の活動に終止符を打った。

 ピンク・レディーはその後何度か再結成し、コンサートツアーを行っている。再結成してからのほうが、歌の表現力やダンスのキレが増しており、より洗練されたステージに往年のファンは熱狂した。 今でも「サウスポー」は高校野球の応援曲として演奏される他、「NHKのど自慢」では、リアルタイムでは知らないはずの若い女性たちがピンク・レディーの曲を完璧な振り付けで歌う光景を見ることができる。また楽曲がCMに使われることも多く、「UFO」は、2017年1月現在でも、携帯電話会社のCMで替え歌が流れている。発売から40年たってもCMに使われる曲のパワーたるや、恐るべしである。アラフィフ世代以上であれば、テレビからイントロが流れてくると自然に体が動いて、頭の後ろから右手を出すあの振り付けをやってしまうのではないだろうか。

ザ・ベストテン☆エピソード
 後楽園球場でのさよならコンサートの数日前、ピンク・レディーはリハーサル会場からザ・ベストテンに中継で出演。ランクインはしていなかったものの、スポットライトのコーナーで「OH!」を歌いました。これが解散前にピンク・レディーとしてテレビで歌った最後の機会です。実はこの時、いつも衣装のスカートの下に履いている、見えてもOKなステージ用のアンダーパンツをマネージャーが忘れたことが直前に発覚。常にローアングルから撮られることが多かった2人は気が気ではなかったそうですが、そのまま歌ったそうです。
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