このコーナーでは、当時のランキングやエピソードと共に、「ザ・ベストテン」に出演した歌手のヒット曲を紹介していきます。第9回は1983年9月8日のランキングを紹介。今月のスポットライトは、約40年にわたって活躍し、幅広い音楽性の楽曲を生み出しているバンド、
THE ALFEEを取り上げます。
歌と伴奏がずれる!? 音がフニャフニャ!? 散々な目に遭わされた中継
spot_photoです。

 桜井賢、坂崎幸之助、高見沢俊彦の3人によるグループ、アルフィー(現THE ALFEE)。1975年にフォークグループとしてデビューするも鳴かず飛ばずで、他の歌手のバックバンドなども務めていた。彼らが「ザ・ベストテン」に最初に出演したのは、実はアルフィーとしてではなく、研ナオコのバックバンドとしてである。1978年9月21日、研ナオコの「窓ガラス」がランクインした時、荒川河川敷の自動車教習所敷地内からの中継で、3人がフォークギターを持って伴奏していた。そんな不遇の時代を過ごしながらも、音楽性を試行錯誤しながら、ライブ活動で地道にファンを増やしていった。

 1983年8月11日、「スポットライト」のコーナーに初出演。大阪城野外音楽堂からの中継で歌ったのが「メリーアン」である。まだ知名度の高くなかった彼らが、約4000人の観客を総立ちにさせ盛り上がる様子は、お茶の間に大きなインパクトを与えた。4週間後、9月8日に「メリーアン」は第7位で初登場。ここから10週連続でランクインする快進撃が始まることになる。
 ただ、この初ランクイン回は散々なハプニングに見舞われた。この日、アルフィーは南紀白浜のサファリパークから中継で歌ったが、3人の歌がカラオケからわずかに遅れ、終始ずれたまま放送されたのである。アルフィーには何の落ち度もなく、実はこの回は番組初の国内衛星中継で、3人のマイクの音声が衛星を経由してTBSに届くまでにタイムラグが生じたためであった。思わぬケチがついてしまったが、この「メリーアン」のヒットで彼らは一躍有名になり、この年の紅白歌合戦にも出場した。
 翌84年に「星空のディスタンス」「STAR SHIP」と、よりロックテイストの強い曲を立て続けにヒットさせ、以後もベストテン終了までコンスタントに楽曲をランクインさせた(86年よりTHE ALFEEとグループ名の表記を変更)。当時、歌番組への出演を拒否するロック系の歌手も多かった中、彼らは積極的に出演。またコンサート会場から中継で歌うことがかなり多く、熱いライブを展開するロックバンドであることを強く印象づけた。今でこそ、ライブ会場で客席全体が拳を振り上げたり、頭上で手拍子をしたりして一糸乱れぬ動きを見せるのは当たり前の光景だが、当時その様子がテレビで流れるのは珍しかった。

 ベストテンにおけるTHE ALFEEのランクイン総週数は94週で、歌手別ランキングで14位。楽曲ごとにボーカル担当が異なるというスタイルも相まって、ベストテン放送期間中だけでも様々なタイプの作品をランクインさせている。現在に至るまで約40年間メンバー変更もなく、これほど幅広い音楽性の楽曲を発表しているグループは、日本の音楽史においても稀有であろう。

 もう一つ、彼らを襲った番組史上最悪のハプニングにもふれておかねばなるまい。1984年12月13日、「恋人達のペイヴメント」が第6位にランクイン。リクエストを送った愛知県犬山市の女性ファンの自宅をアルフィーがアポなしで訪問し、目の前で歌って喜んでもらおう、というサプライズが番組側の企画で実行された。しかし訪ねてみると当のファンは不在で、完全な企画倒れに。せめて近所の住民たちに歌を聴いてもらおうと、3人はその自宅前で歌うが、カラオケの音がまるで伸びきったカセットテープのようにフニャフニャ。これは、真っ暗な住宅街を照らすため、スタッフがリハも無しに照明を点灯した結果、周辺機材の電圧が下がってしまったためであった。音声スタッフは必死に指でテープを回していたという。さらに、歌うアルフィーの後ろで、飼い犬の大型犬が吠え続けるという、まれに見るグダグダな放送に。困惑した顔で、それでも歌い続ける彼らであったが、さすがに間奏で「サイテー!」と連発していた。現場を担当したディレクターは、後でお詫びの手紙をアルフィーに書いたそうである。

ザ・ベストテン☆エピソード
 節目となる回にはスタジオを飛び出し、系列局の地元へ出張して野外会場から大々的に公開生放送を行いました。300回記念の「ザ・ベストテン イン長崎」が最初で、以後、350回記念(岡山)、400回記念(静岡)、450回記念(松本)、500回記念(仙台)、550回記念(鹿児島)と行われ、大盛り上がりでした。中でも、400回記念(85年10月17日)は、静岡県日本平の野外ステージからの中継。本番中に会場に到着したとんねるずはステージにたどり着くまでに観客からもみくちゃにされ、衣装がボロボロに。さすがに命の危険を感じるほどだったそうで「テメーら最低なんだよ!」と本気で怒鳴っていました。
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