このコーナーでは、当時のランキングやエピソードと共に、「ザ・ベストテン」に出演した歌手のヒット曲を紹介していきます。第6回は1984年12月27日のランキングを紹介。今月のスポットライトは、女優・タレントとしての活動のほか、客員教授として短大で教壇に立つなど幅広く活躍している菊池桃子さんのアイドル時代の代表曲、「雪にかいたLOVE LETTER」を取り上げます。
アイドルが歌うクリスマスソングの先駆け
spot_photoです。

 菊池桃子は1983年に学研が創刊した発売したアイドル雑誌、その名も「Momoco」の表紙を飾るイメージガールとして芸能界デビュー。可愛らしく清楚な美少女ぶりは男性を中心に人気を集め、1984年4月21日、「青春のいじわる」で歌手デビューした。ささやくような優しい歌声が特徴で、従来のアイドルの主流だったキラキラした衣裳やフリル付きのドレスを着ることがなかったのも画期的だった。
 「ザ・ベストテン」に最初に登場したのは84年5月31日。「今週のスポットライト」のコーナーで「青春のいじわる」を歌った。当時16歳。デビュー日が同じだった岡田有希子と2人揃ってのスポットライト出演だった。菊池にとってこの番組は芸能界へ入る前から憧れの存在であり、そこへ出演することは歌手として一つの目標だったという。

 ザ・ベストテンに初ランクインしたのは、3枚目のシングル「雪にかいたLOVE LETTER」。当時既に「恋人がサンタクロース」(松任谷由実)や「クリスマス・イブ」(山下達郎)などは存在していたものの、歌謡曲のクリスマスソングがシーズンに合わせて発売されヒットしたものとしては、おそらくこの「雪にかいたLOVE LETTER」が最初のケースである。歌のいちばん最後のフレーズを譜面通りに歌わず、あえて「…メリークリスマス」と台詞でささやく演出に、ファンは心をわしづかみにされた。ザ・ベストテンでは9週連続でランクインし、最高5位を記録。84年12月27日の放送では、ドラマ撮影のため滞在していた東伊豆の稲取港から生中継。魚介類が好きな彼女は名物の金目鯛や伊勢海老に目を輝かせつつ、港に集まった大勢の地元民が見守る中で歌った。同年代のファンから声援を受けることがほとんどだった彼女は、歳末の忙しい時期にもかかわらず中継の準備に協力し、声援を送ってくれた地元の漁師のおじさんおばさんたちの温かさに感激したという。年が明けた85年1月10日の放送ではスタジオで歌い、なぜか金髪の外国人チアリーダーたちが後ろではつらつとダンスを繰り広げる演出に。クリスマスを過ぎていたため、ラストの「メリークリスマス」の台詞は「ハッピーニューイヤー!」に変えて披露された。
 以降、「卒業-Graduation-」が4位、「BOYのテーマ」が3位、「もう逢えないかもしれない」が3位、「夏色片想い」が2位など、なかなか1位になれなかったが、86年9月18日、「Say Yes!」で念願の1位に。番組史上でも数少ない初登場1位だった。この時は、いつものTBSのGスタジオに番組始まって以来の約500人ものファンが入り、彼女が歌う小さなセンターステージを取り囲んで手拍子と声援で盛り上げて祝福したのであった。
 当時高校生だった菊池は学業との両立が大変だったようだ。ベストテンの放送日は学校の校門前から車でTBSへ直行、制服のままリハーサルをやっていたという。曲がランクインしていながら「試験勉強中」というリアルな理由で出演しなかったこともある。その後、無事に短大へ進学した。
 88年に突如ロックバンドへの転向を宣言し、RA MU(ラ・ムー)を結成してファンを驚かせたが、ラ・ムーは約1年で解散。その後は女優・タレントとして幅広く活躍。39歳の時から大学院で政策学を学び、2012年8月からは母校である短大の客員教授を務めているほか、雇用政策などについて講演活動も行っている。2015年秋には「一億総活躍国民会議」の民間議員の一人として起用され、大きな話題を呼んだ。かつてのアイドルが積極的に社会貢献しようとしている姿に、かつてのファンもエールを送っているはずだ。

ザ・ベストテン☆エピソード
 番組放送当日、スタジオに来られない歌手を仕事先まで追っかけ、生中継で歌ってもらうのがこの番組の売り所でした。その中継先からレポートを担当したのが「追っかけマン」です。当時TBSアナウンサーだった生島ヒロシ、松宮一彦がその代表格ですが、地方では各地方局のアナウンサーが担当し、それらを総称して「追っかけマン」あるいは「追っかけウーマン」と呼ばれました。普段は音楽番組などを担当しているアナウンサーが追っかけマンを務めるケースが多かったようです。各地の視聴者にとっては、地元の局アナが有名歌手と共に全国放送に映る姿は、どこか誇らしくもあったのでした。
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