前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン
(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。
今回は、アルバム直前のシングル曲に着目した。
第5回:アルバム直前シングル・ランキング (09年12月:前月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
タイトル アーティスト シングル
発売日
アルバム
発売日
タイアップ
種別
1位 3 100.0 いちょう 遊助 11.5 12.17 食品CM
2位 4 94.4 キセキ GReeeeN 2008.5.29 2008.6.26 ドラマ
3位 5 85.0 ふたつの唇 EXILE 11.12 12.3 ドラマ/携帯CM
4位 8 63.4 ゴールデンタイムラバー スキマスイッチ 10.15 11.5 アニメ
5位 10 55.0 哀しみはきっと UVERworld 10.29 12.10 ドラマ
6位 11 44.2 なくもんか いきものがかり 11.12 12.24 映画
7位 12 43.2 逢いたくていま MISIA 11.19 12.17 ドラマ
8位 18 35.9 遥か GReeeeN 5.28 6.11 映画
9位 23 32.1 フユラブ Juliet 10.8 11.5
10位 34 26.9 君に会いたくなるから 西野カナ 6.4 6.25
11位 35 26.5 ラバソー 〜lover soul〜 柴咲コウ 9.17 11.19 ドラマ
12位 36 24.8 サクラ咲ケ 2005.3.24 2005.8.4 予備校CM
13位 37 24.5 つないだ手 Lil'B 11.12 12.10 アニメ
14位 40 24.0 HANABI Mr.Children 2008.9.4 2008.12.11 ドラマ
15位 45 23.3 みんな空の下 絢香 7.9 9.24 化粧品CM
※アルバム発売前後半年以内のCDシングル曲を対象とする。特に年指定のないものは2009年。
※ タイアップでは、配信会社の月間タイアップは除く。

 ノン・シングルでもアルバムTOP10入りする吉田拓郎や中島みゆきなどのベテランは別格として、現代は3〜4枚のシングルを発売後、オリジナルアルバムをリリースするというのが一般的だ。ここから単純に考えると、アルバム直前のシングルは楽曲ランキングの3割前後を占めることになる。
しかし、表を見ると、実際には直前シングルの上位5作が総合でもTOP10入りしており、ヒット作が非常に多い。参考までにアルバム直後シングルも数えてみたが、総合TOP10中は嵐と西野カナのみの2作。特に嵐は、上位常連で、アルバム直後だから売れたという感じはない。
 
 アーティストやメーカーとしては、直前のシングル(着うたなら¥100〜¥300程度、CDでも¥1,000前後)をヒットさせて、より売上金額の大きなアルバム(同¥3,000前後)のヒットを期待したいところ。そう考えると、この直前シングルにかなりの注力をする、というのは当然の流れと言えるだろう。

 さて、直前シングルTOP15を見てみると、うち13作がタイアップ付だ。この割合自体は総合ともさほど変わらないが、その内訳として最大級タイアップと言えるドラマ主題歌が13作中6作を占めており、如何にこのシングルに力が入っているかが分かる。ドラマの終盤に、主題歌を歌うアーティストのアルバムがリリースされることを多々見かけるが、これは決して偶然ではないのだ。3位のEXILE「二つの唇」にいたっては、フジ月9ドラマ主題歌と、ソニー・エリクソンの携帯電話CMのW大型タイアップで、12月発売のアルバムへの期待度も半端なく大きいことが分かる。しかも、2位のGReeeeN「キセキ」や、14位のMr.Children「HANABI」のように、ドラマから1年以上経過しても支持され続けている例も少なくない。つまり、単純にタイアップに依存している訳ではなく、アーティスト側もアルバム直前という書き入れ時を逃さぬよう、ここ一番の名曲を送り込んでいるのだ。

 また、4位のスキマスイッチや13位のLIl‘Bは、共にアニメ『鋼の錬金術師』のテーマ曲で、いずれもSMEグループのアーティストが採用されている。しかし、スキマスイッチの最新アルバムの売上は、前作に比べ決して伸びてはいない。既にビッグなアーティストがアニメに起用されても、その楽曲、そのアニメに限って人気が出るだけで、ファンの広がりはあまり期待できないようだ。それとは対照的に、9位のJulietはノンタイアップで上位入りしており、歌詞の共感度の高さが、タイアップに代わるブレイクへの牽引力となったことがよく分かる。

 以上のように、アルバム直前のヒット曲の集中ぶりがよく分かった。昨今は、ファンがアルバム直前のシングルを買い控えることを懸念して、メーカーがシングルCD自体を発売せずにアルバムヒットに繋げるケース(例えば、木村カエラ「Butterfly」、加藤ミリヤ「Aitai」など)も増えつつあるが、やはり、より幅広い世代にアピールするには、こうしたパッケージ戦略はまだまだ重要と言えそうだ。



キセキ
GReeeeN
 

 羞恥心のメンバーとして08年大ブレイクした上地雄輔が、09年3月に“遊助”としてソロデビュー。本作は、植物シリーズ「ひまわり」「たんぽぽ」に次ぐ第3弾シングルで、タイアップのマルコメCMソングが似合う心温まるラブソング。
 CDセールスが、前2作ほど伸びていないにも関わらず、歌詞検索や着うたがかなり好調なのは、パッヘルベルの「カノン」をモチーフとしたメロディーに聞き覚えがあり、これまで以上に幅広く注目されていることもあるだろう。勿論、 “「ごめんね」を言われるより「ありがとう」を言わせるように”といった、彼のキャラクターが前面に出た性善説的な歌詞も良い味を出している。
 12月16日には、1stアルバム『あの・・こんなんできましたケド。』をリリース。全14曲収録だが、「U-sic」「わんぱく野球バカ」といったお茶目なタイトルから、「イジメ」のようなシリアスなものまで等身大で取り組めるのが、やはり彼の最大限の魅力だろう。


「いちょう」遊助


ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

今月は、韓国の男性グループ、BIGBANGに注目した。彼らは、1988年〜90年生まれの5人組で、2006年から韓国で活動開始、09年6月にシングル「MY HEAVEN」で日本デビューを果たした。歌やダンスは勿論のこと、楽曲制作まで自分たちで手がけているのが、これまでの“アイドル”と呼ばれるアーティストとは一線を画する。また、音楽面では、4つ打ちのダンス・ミュージックに、ラップを取り入れたヒップホップ・テイストを織り交ぜているのも珍しい特徴で、日本でブレイクした韓流の一般的傾向とは異なり、群を抜いて若いファンが多いのも肯ける。

 検索数トップの3rdシングル「声をきかせて」は、冬を意識してか、これまでの作品中、最もメロウな歌詞で、本作も、優しいボーカルと、激しいラップのギャップが聴きどころ。なお、4位の「Bringing You Love」は、1stアルバム収録曲だが、よりダンサブルで、かつ日本語、英語、韓国語が往来する歌詞も面白く、彼らのスキルの高さが分かる1曲。とにかく、“男性アイドル”という先入観は禁物の逸材で、優れたポップスファンならば男女問わず聞いてもらいたい。

BIGBANG
BIGBANG人気曲
順位 占有率 曲名 初収録作品 発売日
1 52.9 声をきかせて 3rdシングル・A面曲 2009.11.5
2 12.3 ガラガラGO!! 2ndシングル・A面曲 2009.7.9
3 7.1 MY HEAVEN 1stシングル・A面曲 2009.6.25
4 5.7 Bringing You Love 1stアルバム 2009.8.20
5 5.3 オラ Yeah! 3rdシングル・c/w 200911.5




つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!などでヒットチャート解説に関する連載を執筆中。オリジナル・アルバムを発表したアーティストで、09年よく聞いた順は、中島みゆき、lecca、アンジェラ・アキ、中森明菜、Superfly。吼える女性ボーカルが好きなようです。えぇ、“M”です(笑)。