恋はダメならダメでいいって思えるから、楽なんですよ。

―― ここからはニューシングルについてお伺いしていきます。収録されている4曲を聴いて感じたのですが、佳奈さんの声は曲によって、大人っぽくなったり、可愛らしくなったり、中性的で力強くなったり、かなり印象が変わりますよね。

あ、たしかにそうかもしれないです。デビュー当時、キムチの頃は「みんなに笑顔になってほしいな」とか「自分も笑顔でありたいな」と思っていたので、なるべく可愛らしく明るめの声で歌うように意識していたんですね。でも最近は、今年で二十歳になるということもありますし、もうちょっと歌声でもいろんな形で自分を表現できたらいいなと思うようになりまして。だから今回のレコーディングでは、背伸びしすぎない程度に、あえて力強く、大人っぽく、歌いなおしたりしました。

―― 1曲目「little flower」の作詞は“Calros K”さんですが、佳奈さんからも「こういうものを歌いたい」というような希望を伝えたりもしましたか?

photo_01です。

この歌は、まずCalrosさんに「flower」というテーマで作詞をお願いしたんですね。それで一旦、歌詞を書いてくださって。そのあとに、私とスタッフさん含めて「もっとこのフレーズはこうしたほうが良いんじゃないですか?」というやり取りをしたんです。もうレコーディングする30分前くらいまで「僕はこう思うけど、佳奈ちゃんはどう?」と、考えてくださいました。それで私は「サビのところが、もうちょっとくだけた、わかりやすい表現がいいです」と伝えて<好きなんだ 君へFlower>というフレーズに変わったりもして。

―― 歌は<胸の中の一言 伝えたら何かが 変わっちゃいそう>というフレーズで幕を開けますが、伝えることの不安ってみんな抱えがちだと思います。佳奈さんはいかがですか?

恋をすると、ガツガツいくタイプでした(笑)。<好きなんだ 君へFlower>って好きなひとの目の前で歌っちゃうくらい、とても積極的で。だから歌のように<嫌われたくはないけれど>と悩むよりは「モジモジしているくらいなら伝えちゃえー!」って性格ですね。…でも私のようなタイプはフられるんですよねぇ。男のひとは追いたいから、女性から来られちゃうと冷めちゃうんだよって、最近聞きました(笑)。

―― <大切なことはただ一つ 自分に正直でいること>というフレーズも凜としていて印象的です。恋にストレートな佳奈さんは、自分に正直でいられなくなるときはあるんですか?

それが、恋はダメならダメでいいって思えるから、楽なんですよ。伝えて実ったら嬉しいし、実らなかったらもう一生喋らないかもしれないから、逆に正直になれます。だけど、そうじゃない人間関係だとまた違いまして。たとえば、ずっと付き合っていきたい友達には、言いづらいことをなかなか言えません。遠まわしに伝えたいけど伝わらなくて、結局は自分が我慢することがとても多いんです。なんか…難しいですよね。

―― 歌うときにはどんなことを意識されましたか?

この歌を、可愛く表現しようと思ったら、そういう方向にもできたんですけど、そうすると歌詞が歌詞なので“女の子すぎてしまう”と思ったんです。だけど、恋をしたらみんな必死になるのは同じだと思うので、そこは男の子にもわかってもらいたいなって。その“必死さ”がちゃんと伝わるように歌いましたね。

―― 歌っていてとくにグッときたフレーズを教えてください。

はじめは気づかなかった 小さな小さな花だけど
いつのまにか こんなに大きく 咲いていたんだ
little flower」/足立佳奈

ラストサビ前のこのフレーズですね。メロディーが一気にブワーッて広がっていくんですけど、<君>への想いに気づいて、その気持ちがどんどん強くなっていく感じがすごく好きです。

―― 2曲目「ウタコク」の作詞には“「今日、好きになりました。」製作委員会”とクレジットがありますが、どのように歌詞は作られたのでしょうか。

これは、AbemaTVの恋愛リアリティショー『今日、好きになりました。』に出演している高校生の子たちが実際に話した言葉を選んで、そのまま抜き取って、繋げたものが歌詞になっているんです。だから<めちゃ>とか<やばいもう>とか普段の曲には出てこないであろう、日常会話的なワードが入っています。すごくリアルでストレートな歌詞なので、こないだ女子高生のファンの子に「これ超わかるんですけど!」って言われて、嬉しかったです(笑)。

―― 佳奈さんが一番共感したのはどのフレーズですか?

冒頭の<ah なんていったらいいんだろ>ですねぇ。恋をしているときって、いつも本当に「もう…なんていったらいいんですかねぇ…」って感じになるので(笑)。あ~わかるなぁって。この「ウタコク」に綴られているシチュエーション自体は、私の学生時代にはなかったことばかりなんですけど、その<なんていったらいいんだろ>の感覚だけは自分にもあるなぁと思いましたね。

―― それこそ、高校の頃は音楽活動が忙しくて、恋愛する時間がなかったのではないですか?

というより、高校の音楽科にいたので、まずクラスに男の子が4人くらいしかいなかったんですよ。しかもその男の子たちは、ビックリしちゃうくらい女子力が高い。たとえば私のスカートのホックが取れちゃったりすると「縫ってあげるよ!」ってすぐお裁縫してくれたり。だから仲良い同士でキュンキュンとかなかったんですよね。

―― そうすると、どうやってラブソングを生み出していったのですか?

高校には普通科や商業科もあって、そこには男の子たちもたくさんいて、カップルの子たちがみんな手を繋いで帰っていく姿が見えるわけですよ。お揃いのリュックとか背負って。その光景を見ながら「あー、いいなぁ…」と思い、そのカップルの物語を想像して、家に帰って歌詞にしたりしていました(笑)。

前のページ 1 2 3 次のページ