INTERVIEW
「寂しい」という気持ちが男性に向かない(笑)

そして、今回のニューシングル「闇夜に提灯」がリリースされる2017年2月15日は赤い公園のデビュー5年目の記念日でもありますね。

米咲:デビューして5年って言うと「もうそんなに経ったか!」と思うんですけど、結成してからで言うと今年で8年目になるんですよ。そう考えると8年ってすごく長かったなぁって感じるから不思議なんですよねぇ。だから多分、音楽をやっている人たちには「短い」って笑われてしまうような“下積み”の時間が、今でも私たちのなかではとても精神的に濃いものとして残っているんだと思います。

では、ここからはその5周年イヤーの第一弾を飾るシングルについてお伺いしていきます。まず表題曲の「闇夜に提灯」はドラマ『レンタルの恋』の主題歌ですね。どんなテーマを核に楽曲を作っていったのでしょうか。

津野:このドラマは剛力彩芽さんが“レミちゃん”っていう指名ナンバー1のレンタル彼女を演じているんですけど、とにかく最強なわけですよ。レミちゃんは、超可愛いし、なんでもお客さんの望みを叶えてくれる。それって、自分のなかで例えるならどんな存在だろうな…って考えてみたら、暗〜くて長くてずっと続いてしまうんだろうなと思っていた闇に現れる、たった一つの提灯なんじゃないかなって。その比喩のイメージが浮かび上がったところから書き進めていきました。

サビはとにかく言葉のリズムと語感が気持ち良いですよねぇ。とくに最後の<提灯 マイ・レディー>なんて、どうやって生まれたんだろうと思いました。

米咲:嬉しい(笑)!ありがとうございます!これ、曲作り合宿に行って作っていたんですけど、歌詞をそろそろあげなきゃいけないってときが迫って来ているのに、全然できなくて、ヤバイヤバイヤバイって状態だったんですよ。

千明:顔面蒼白だったよね。疲れ果ててたもん(笑)。

米咲:で、とりあえず隣のカフェに行って、好きなコーヒーをいつもの倍くらい飲んでいたら…<提灯 マイ・レディー>出てきました(笑)!このフレーズ出てきたときは自分でもビックリしましたよ。殺傷力が高すぎて、それが良いのか悪いのか自分では判断しかね、みんなに「どうしよう」って持っていったんですけど、なんとかこうして形になりました(笑)。

また、歌詞には、<踊り子仰山仰山>や<締め太鼓チンドンチンドン>といった日本ならではの言葉が登場しますが、赤い公園は他の楽曲の歌詞でもそういったワードが多い気がします。

photo_04です。

米咲:そうですね。初期の曲にもわりと出てきますし、昔から赤い公園の芯としてある部分だと思います。なんかそういう言葉が得意分野みたいで、エンジン全開にエーイッ!って作るとこうなる場合が多いんですよ。あと、ちーちゃんは滑舌が素晴らしいから、より日本らしい日本語の響きが似合うのもありますね。

千明さんは歌声が凜としていますよね。私も似合うなぁと感じました。そして今作のカップリング「放蕩」もまた日本語の美しさが際立った曲ですが、声の温度が「闇夜に提灯」とはガラッと変わるのでゾクッとしました。

千明:ちょっと低体温な感じですよねぇ。この曲はキーも低いので、とくにAメロとか声に広がりが持てる気がして、すごく好きだなぁと思いました。あと、恋愛を歌ったこういう感情的な歌詞だから、逆に他人事みたいな感じでサラッと歌ったほうがカッコイイかなぁって、ちょっと曲に合ったアダルトな雰囲気にしてみた歌ですね。

「闇夜に提灯」も「放蕩」も“男性目線”の曲ですが、女性目線で歌詞を書くときと感覚は違いますか?

米咲:なんかさっき歌詞を眺めていて思ったんですけど、2曲とも間違いなく私は“女性”の気持ちで書いているんですよ。津野米咲として書いているんです。でも、歌の主人公を“男性”にしたほうが、素直に書ける部分がある。より実際の自分の女性としての気持ちを落としこめるような気がするんです。…シャイだからですかね(笑)。あと、異性の気持ちはわからないから。男性になったことがないからこそ、身勝手に自由に書けるのかもしれないです。

「闇夜に提灯」では、彼が一生モノの提灯を探していましたが、「放蕩」の彼は“放蕩女”さんに<僕に腰かけて>と言っているので、ずっと続く恋愛だとは思っていないような印象を受けました。この2曲の主人公は正反対なのでしょうか?

米咲:いや、「放蕩」の彼も多分、もう彼女のことが一生モノなんだと思います。「闇夜に提灯」と同じように、たった一つの提灯を見つけちゃったから、たとえ放蕩していても、彼女に限っては可愛いって思えちゃうのかも。<僕に腰かけて>って言うのは、『それでもいいよ、だって僕の一生モノだから』…って、いろんなことを許してしまうほど手放したくない気持ちの強さが現れているんでしょうね。

そう考えると一層、彼がこんなに思っているのにお相手はフワフワと放蕩し続けているのが切ないですね…。

米咲:そう、放蕩女め(笑)。でもこれって、自分の中では女性の気持ちを“僕”として書いているんですけど、実際に曲の主人公を女性にしてしまって、男性へ向けて歌ったらだいぶ意味合いが違ってきますね。浮気しても良いよ…みたいな。聴いた人が「ちーちゃんどうした!?」ってなりますよね(笑)。だから“男性目線”っていうのは、なるべくしてなる形なんだろうなぁと思います。

ちなみに、お二人は恋愛体質ですか?

米咲&千明:まったく!

千明:ちょっと私たち近いところがあるよね。

米咲:うん、「寂しい」という気持ちが男性に向かない(笑)。

どこに向くのですか?

米咲:メンバー。

千明:マンガ。

米咲:だからちーちゃんにLINEしてもマンガ読んでいて返信くれないんです(笑)。いやー、もっと若かりし頃は「寂しい」が恋愛に向くようなこともあったのに、なんでだろうなぁ…。少しずつですけど、自分が音楽をやっていることとか、生き方に自信がついてきたからなんですかねぇ。そうすると、今はちょっと恋愛が邪魔になったりするんですよねぇ(笑)。

なるほど…(笑)。では仮に付き合うとしたらどんな方が理想ですか?

米咲:それちょうどさっき二人でも話していたんですよ。“友達”ですね。友達みたいな…関係がいいよねぇ……。ちょっと遠い目になっちゃった(笑)。

千明:そうだね、最高だね。楽しいのがいいよね。ドキドキするより全然、ガハガハ笑っていたいなぁ。笑い声とかに気を遣いたくない。

米咲:ダッハッハッハッて笑いたいよね。…なのにこんな歌詞を書いている(笑)。だから今喋っているときもちょっとぶりっ子しているんでしょうね。サバサバしている自分でありたい、みたいな。やっぱり本音はどこか曲の中にあると思います。



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