嫌やと思うことはしないですよ、楽しいからやるんです。

また桐谷さんは、すべてがこのアルバムに繋がっていたのではないかというくらい、音楽系の役が多いですよね。映画では『ソラニン』でドラムのビリーを、『BECK』でラップ・ボーカルの千葉を、『TOO YOUNG TO DIE!』でドラムの緑鬼COZYを。そしてドラマ『Y・O・U やまびこ音楽同好会』ではボーカル・ギターの河野勇作を演じております。

桐谷:ホンマそうですねぇ、ミュージシャンの役はありがたいことに、多い方やと思います。しかも全く苦にならない。ドラムの練習もギターの練習も、すごく楽しみながらやりましたね。『ソラニン』はレコーディングのドラムも自分で叩かせてもらいましたし、『BECK』のラップもフリースタイルのところはリリックを書かせてもらいました。

いろんなパートを演じられていて、しかも役ごとに自ら演奏をなさっているのが凄いと思います。音楽系の作品ですと、アテブリという形にする方も少なくないですよね。(※アテブリ=音楽に合わせ、楽器を演奏するふりをすること)

桐谷:めちゃくちゃ難易度が高かったらアテブリにするしかないですけど、頑張ってできるんやったら挑戦するべきだし、じゃないと説得力がなくなるし。でも自分が嫌やと思うことはしないですよ、楽しいからやるんです。ドラムは練習を重ねていくごとに、叩けなかったフレーズが叩けるようになるのが嬉しかったし、ラップも面白くて。もともと『BECK』のラップはアテブリって話だったんですよ。それで俺は、自分がラップをしているところを撮って、監督の堤幸彦さんと原作者の方にビデオレターを送りました。「俺の声でやらせてくださいよ!お願いします」って。そんでやることになったんですよね。だって芝居している時の声とラップの声が違うってめっちゃダサいやん(笑)!楽器じゃなくて人間の喉を使うわけだから、自分でやれると思ったんです。

その後、福山雅治さんの音楽番組「ウタフクヤマ」などで桐谷さんが即興ラップを披露されているのを何度か拝見しました。それは『BECK』で得た特技の一つなんですね!

photo_01です。

桐谷:そう、あんなんもう滅茶苦茶な無茶ぶりでしょ(笑) でも緊張する分、燃えるんですよね。あの番組では出演していた小室哲哉さんも「おーっ!」ってなってくれたし。そういう突然の試練がたっくさんあるんですよ。『TOO YOUNG TO DIE!』の舞台挨拶でも長瀬智也が急にこっち見ながらボイパし始めて。(こいつホンマ…)って内心思いながら、即興でラップをするハメになりました(笑)。ちなみに“長瀬”ってものすごく臨機応変に対応しやすい言葉なんですよ。「長瀬、任せ、マジ俺泣かせ」みたいな。で「監督、こんな状況、マジ残酷!」って感じでイケてヨシヨシヨシと(笑)。ラップは完全にダジャレの延長ですね。

桐谷さんのその“挑戦魂”は昔からあったんですか?

桐谷:そういうのがやっぱね、好きなんですよ。高校時代も「もっと世の中に出たい。やりたいことがたくさんある。でも大阪におって何のやり方もわからん。どうしよう」っていう状態だったんです。コンビニ行って並んでいる雑誌を見ても「なんで俺が表紙ちゃうねん!」みたいな(笑)。だからしゃあないなと思って友達と『KEN'S NON-NO』っていう雑誌を作ったりとか(笑)。カセットテープでラジオなんかも作りましたよ。挟むCMまで自分らで作って「おはがき来てまーす!」とか「質問コーナー!」とかやって、みんなに聴かせるんです。あれもおもしろかったなぁ。

桐谷さんは音楽に限らず“0”から何かをつくるエネルギーが溢れていますね!

桐谷:人任せにして乗っかるより大変やけど、その分おもしろいっちゅうかね。終わった後の達成感も大きいし。自分がやりたいことである以上は、自分でやりたいんです。マラソン選手も走るの好きだから頑張れるんでしょ、42.195キロも。あれ嫌いな人は絶対にムリですよ(笑)。それと同じだと思います。何にしても、好きだからやりはじめて、それが全て仕事に繋がったんです。それはすごくありがたいことやと思いますね。

では“歌手”としての音楽活動をこれからも続けていこうという想いはありますか?

桐谷:う〜ん、機会をいただけるならやっていきたいです。でもやっぱり一番大切なのは“音を楽しむ”って書くだけあって、自分が楽しむことじゃないですかね。その想いがある限りは挑戦したいです。ただ、次はいつCDを出して、とかそういうことは全く考えてないです。遊び心を持って、目の前にあることを一生懸命やることが予想もしなかった次に繋がっていくから。狙いを定めてというより、今を楽しんでいれば、また新たな面白いことがやってくるんじゃないかなぁと思いますね。

それはきっと桐谷さんにとって、音楽以外のお仕事に対しても同じ感覚なんですね。

桐谷:そうですね、夢や目標をしっかりと思うことも大事だとは思うんですけど、でもそれって自分で限界を決めていることでもあるというか。もしかしたらそれ以上に行けるかもしれないのに、ハードルを決めてしまったことで、ジャンプ力が下がっているかもしれない。だからどちらかというと、夢より現実を全力で楽しむほうが、気がついたら自分の想像をはるかに超えている可能性があるんじゃないですかね。

ありがとうございました!では、最後に歌ネットを見ている方々にメッセージをお願いします。

桐谷:無垢な想いの歌詞が生まれました。一人でいる時でもいいし、帰り道でもいいし、誰かや何かを思いながら聴いてもらえたら、曲と気持ちがシンクロしてもらえるんじゃないかなと思います。是非、聴いていただけたら嬉しいです!

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