ロックを志した場合、おのずと決まってくるテーマがある。反骨精神や自由への憧れ、などだ。ところがポップを志すと、そのあたりが曖昧だ。その時代において、なにがポップかを常に問い続け、戦い続けなければならないのだ。
聴感上、前者より後者のほうがまろやかだけど、送り手が胸に秘める想いは、より熱いものであることも珍しくない。いきものがかりのふたりがやってきたことも、きっとそうだったのではなかろうか。
残念ながらご縁が薄く、彼らには初期に一度しか取材してないが、その時、水野良樹が言っていたのも、ポップが息づく場所を迷わず目指す、という言葉だったと記憶する。
そんな彼らも20周年を迎え、まもなく47都道府県を回る旅に出る。まさにビギナーズ・マインドを忘れないツアー・コンセプトといえる。その際のアーティスト写真、頭巾を被った“松尾芭蕉ズ”みたいな二人のコスプレは、実にしゃれている!
というわけで本コラムも、改めて二人の代表作(の歌詞)を取り上げる。
聴感上、前者より後者のほうがまろやかだけど、送り手が胸に秘める想いは、より熱いものであることも珍しくない。いきものがかりのふたりがやってきたことも、きっとそうだったのではなかろうか。
残念ながらご縁が薄く、彼らには初期に一度しか取材してないが、その時、水野良樹が言っていたのも、ポップが息づく場所を迷わず目指す、という言葉だったと記憶する。
そんな彼らも20周年を迎え、まもなく47都道府県を回る旅に出る。まさにビギナーズ・マインドを忘れないツアー・コンセプトといえる。その際のアーティスト写真、頭巾を被った“松尾芭蕉ズ”みたいな二人のコスプレは、実にしゃれている!
というわけで本コラムも、改めて二人の代表作(の歌詞)を取り上げる。
2010年5月5日発売
日本語で最も美しい言葉かもしれない…。
そう。日本語で最も美しい言葉かもしれないのが、ありがとう、だ。この言葉をその美しさそのままメロディに迎え入れたのが、彼らの代表曲「ありがとう」だった。NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』主題歌だが、曲作りにおいて水野が意識したのは、毎朝、全国津々浦々の不特定多数の耳に触れるに相応しい作品を実現すること、だったろう。
結果、言葉自体は平易だが情報量は豊富で、歌詞という観点からの工夫も凡庸じゃない、まさにエバーグリーンな仕上がりとなった。
朝という時間帯に差し込む陽の角度ゆえに見えてくるものにも、敏感に反応している歌詞といえる。
具体的なフレーズだと、誰もが印象的に感じるだろう[窓を開ける][舞い込んだ未来]のところや、[あおぞらも 泣き空も]という工夫。
とどめは[ありふれたことさえ]だ。この言葉だけで強引に納得させるのではなく、全体として“ありふれている”もののなかに眠る“黄金”を、丹念に解き明かしてみせているのだ。
そしてこの楽曲の最大の“オチ”は、“ありがとう”と歌ってはいるが、歌の最中においては[繋がれた右手]から伝わるものが主役で、主人公が実際に声に出し伝えるのはその後の行動において、という、そんな終わり方をしていることなのだった。
2008年7月9日発売
投げ出された身体の、自由と刹那
さて、次は「ブルーバード」。この歌は物語を伝えるというよりも、その瞬間、身体が覚えるある“感覚”こそをテーマにしているのではなかろうか。空へ、高く、空へ…。身体を投げ出し、目指した[白い あの雲]へと届かんとする主人公の皮膚感覚を、聴き手がリアルに受け止めてこそ、本作の醍醐味となる。
アップテンポな曲の場合、歌詞を噛みしめても意味がなかったりもするが(そもそもイミよりノリが優先なので)、でも例えば[錆びれた古い窓]が壊れる際に発するのが[愛想尽きたような音]だったりするあたり、非常に“歌詞栄え”する表現も用意してくれている。
でも、この歌の最大のテーマって、地球上で生活しているわれわれ人間たちが、生まれながらに背負っている刹那=重力なんじゃないかと思う。それを音楽的な意味で強烈に伝えるのは、この曲がマイナーな曲調だからだ。
元気でいて、物悲しい。歌詞に[堕ちていくと わかっていた]という表現があるからではないのだが、[突き抜けたら]と歌いはしつつ、主人公は雲の在処へたどり着くことの難しさも知っている。
晴れ渡った青空は気持ちいいが、それも過ぎれば物悲しくなる。それは誰もが知っている感覚。だからポップ・ソングの題材になるのだろう。
2008年12月24日発売
世紀末と音楽の兼ね合い
さて今回、歌ネットのいきものがかりの楽曲群を眺めていて、改めて気になった曲があったので、それを最後に。「プギウギ」だ。「ブギウギ」の間違いじゃないのかと思ったが(僕もよくプとブを打ち間違えるので(笑))、そうじゃなかった。ただ、そもそもはそうだったのだけど、この表現も面白いから、みたいなことで、たまたま採用されたものらしい。
歌詞には[プギウギでブギウギなプギウギ]というフレーズも出てくる。おそらく、どっちでも意味は同じってことだろう。ただ、これは歌だ。“プ”と“ブ”じゃ響きの印象がだいぶ違うし、もちろんこれは本作の重要なアクセントとなっている。
言葉遊びが楽しいノリノリの作品であることは間違いない。しかし意味を探すなら、[地球最後][新世界]という言葉に着目したい。
そもそもブギウギは19世紀末ごろのアメリカで、当時、過酷な労働を強いられていたアフリカ系アメリカ人たちを元気づけるものとして発展したとされる。それを彼らが、J-POPにおける最高のエナジー・ソングとして受け継いだと解釈したい。
47都道府県を回り終えたあと、彼らに最新型のポップが芽生えることを祈るばかりである。
小貫信昭の名曲!言葉の魔法 Back Number
近況報告 小貫 信昭
(おぬきのぶあき)
先日、開園(午前9時)に間に合うよう新宿御苑へ出かけ、桜を眺めてきた。新宿駅の南口から「新宿門」を目指したのだが、おそらく同じ目的である周囲の通行人は、ほぼ全員海外からのツーリスト。「アメリカ」って名前の桜も咲いていて、調べたら、もともとカリフォルニアの農園で生まれたんだとか。ソメイヨシノより大輪でピンクも濃くて、陽気で華やか…。でもまあ、木の名前を名札で確認したので、より「そのように」感じられたのかもしれないけど(笑)。いきものがかりの「SAKURA」にぴったりの花も、きっと園内に咲いてたはず。
先日、開園(午前9時)に間に合うよう新宿御苑へ出かけ、桜を眺めてきた。新宿駅の南口から「新宿門」を目指したのだが、おそらく同じ目的である周囲の通行人は、ほぼ全員海外からのツーリスト。「アメリカ」って名前の桜も咲いていて、調べたら、もともとカリフォルニアの農園で生まれたんだとか。ソメイヨシノより大輪でピンクも濃くて、陽気で華やか…。でもまあ、木の名前を名札で確認したので、より「そのように」感じられたのかもしれないけど(笑)。いきものがかりの「SAKURA」にぴったりの花も、きっと園内に咲いてたはず。

